源氏川苦心の快楽書肆
古い本を探しては読みふけつてゐます。よければお付き合ひくださいな。
ついに霊魂をとらえた!
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ついに霊魂をとらえた!-ポルターガイストは実在する
つのだじろう【著】
サンデー社刊
1982(昭和57)年8月発行


タイトルを見て、苦笑まぢりに「ああさうですか」と言ふ反応が多いかも知れませぬ。
つのだじろう氏は、『うしろの百太郎』『恐怖新聞』などの漫画で霊魂の存在を訴へ、心霊世界を認めないばかりに不幸な目に遭つてゐる人たちが多いと憂いてゐました。
本書はそれらの集大成と申すべき一冊であります。

つのだ氏自身は霊能者ではなく、あくまでも研究者からの視線で読者に語りかけます。即ちあらゆる現象に対しては、まづは疑ふ姿勢をとる。
霊現象を証明するのは難しいとして、誰でも見てわかる「物理的心霊現象」の解明に特に熱心であります。それでもなほ、まづは疑つてかかるのださうです。例へば心霊写真は、二重露光防止付き(時代を感じますが)のカメラでないと信用しないとか。真面目で真剣なのです。

ゆゑに、テレビ番組などでふざけ半分の心霊特集などがあると、いかにもインチキ臭く演出するので、著者は憤慨してゐるのです。確かにニセモノが多すぎるので、数少ない「本物」までが疑はれると。普通の人には真偽の判定が出来かねるのが辛いところでせうか。

著者のいふやうに、本書を読んですぐさま「さうか、超常現象はあるのだな!」と納得する人は少ないでせう。しかし、かういふ世界がもし存在するなら、と考へた方が豊かな心持になれるのではないでせうか。

ついに霊魂をとらえた!―ポルターガイストは実在する/つのだ じろう

¥795
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時が滲む朝
時が滲む朝 (文春文庫)/楊 逸

¥450
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時が滲む朝
楊逸【著】
文藝春秋(文春文庫)刊
2011(平成23)年2月発行


大学に進学した二人の青年、梁浩遠と謝志強。なかなかの純情者たちであります。
中国ではいまだにかういふ若者が多いのでせうか。
早朝に大声で叫んだり、テレサ・テンの歌に恥かしがつたり。日本の若人だと「友情」なんて言葉を口にするのも照れるのではないでせうか。

民主化を渇望する現代中国の若者を描いて、余すところがない...と言ひたいところですが、随分と慌しく話が進んでしまひ、もう少しじつくりと味はひたいと思ひました。
天安門事件についても、あつさりと記述されてゐるやうな印象です。もつと長篇で扱ふ題材では? もつたいないのであります。

とは言へ、これは力瘤の入つた力作と申せませう。少なくともわたくしは、この著者の他の作品も読んでみたいと勘考いたしました。


作者の楊逸さんの名前に「ヤン・イー」とルビがふつてあります。昔なら「よういつ」とでも書いたでありませう。
最近では、中国人の名前も現地の発音に近い表記がされてゐるやうです。新聞でも、胡錦濤(フーチンタオ)とか、温家宝(ウェンチアバオ)なんて書いてあります。
魯迅も現在ならルーシュンとして紹介されたでありませう。だからどうだと言ふわけではないがね、ちよつと書いてみただけです。

ぢや、おやすみなさい。

大相撲親方列伝
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大相撲親方列伝
石井代蔵【著】
文藝春秋(文春文庫)刊
1993(平成5)年7月発行


旭天鵬関の初優勝で大いに盛り上つた五月場所。また日本人力士は優勝できなかつたかと思つたら、旭天鵬関はすでに「日本人」になつてゐたのですね。
それにしても、横綱白鵬関が大崩れしたといふのに、六人もゐる大関が誰も優勝できないのはどういふことか。

旭天鵬関の師匠は、「ピラニア」「相撲博士」と呼ばれた元大関旭国。引退後大島部屋を興し、横綱旭富士を始めとして多くの個性的力士を輩出しました。
モンゴルから弟子を連れて来たのも、大島親方が最初らしい。とすると、その後モンゴル勢が大相撲を支へたことを考へると、功績大と申せませう。

さて本書『大相撲親方列伝』は、その大島親方の先輩に相当する名伯楽の物語であります。
登場するのは花籠(元大ノ海)・二子山(元若乃花)・春日野(元栃錦)・九重(元千代の山)・九重(元北の富士)・三保ヶ関(元増位山)・北の湖・井筒(元鶴ヶ嶺)・佐渡ヶ嶽(元琴桜)の9人。
石井代蔵氏の筆致は、まるで小説を読むやうな味はひがあります。ま、親方の手法も現在では通用しない部分が多々あるでせうがね。
「ムリヘンにゲンゴツ」が許されぬ時代となり、変化についていけない親方は大変なのであります...

大相撲親方列伝 (文春文庫)/石井 代蔵

¥459
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鉄道に生きる人たち
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鉄道に生きる人たち
宮脇俊三【著】
中央書院刊
1987(昭和62)年4月発行


宮脇俊三氏が雑誌『運輸界』にて連載した、国鉄(当時)関係者へのインタビュー集であります。
連載は1979-1981年に亘つてゐますが、単行本になつたのは間が空いて1987年になつてから。ゆゑに宮脇氏も「あとがき」にて、「(連載当時から)すでに相当の年月が経っている。(中略)いま速記を読み返してみて、あらためて変りようの激しさに痛いほどの感慨を覚えざるをえない。お話いただいたデータなど、すっかり古くなっている」と述べてゐます。

わづか6-8年ほどでこの変りやうであります。更に25年も経過した今では、もう本書は全く無価値なものでせうか。
いやいやいや。経年したからこそ、この国鉄末期の現場の声がまことに貴重に思へるのです。

車掌や運転士といつた身近な人も登場しますが、多くは一般の人から見ると、裏方と呼ばれる仕事人であります。保線・土木・操車場・ダイヤ作成・駅舎の設計・車両の修理・情報システム管理...
かういふ仕事人たちの素顔に迫る人として、やはり宮脇俊三氏は最適人でせう。
とかく建前で飾りたがるところを、さりげなく本音を引き出すあたりは、文章のみならず話術でも非凡であつたと思はせるのであります。

文庫化もされず、著作集にも未収録の本作ですが、老若男女問はず楽しめる一冊と申せませう。

鉄道に生きる人たち―宮脇俊三対話集/宮脇 俊三

¥1,264
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時代劇博物館Ⅱ
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時代劇博物館
島野功緒【著】
社会思想社(現代教養文庫)刊
1994(平成6)年7月発行


評判をとつた『時代劇博物館』の続篇。
なぜ正篇をとりあげぬのかといふと、入手出来なかつたからに相違ありません。残念。
著者はかつて新聞社で映画記者の経験をもつだけあつて、そのウンチクには「ほほう」とうなるばかりであります。ひと昔前なら「へえ」でせうか。

主に、時代劇の定番となつたキャラクタアたち。史実とはかなりかけ離れてゐるものが多いやうです。講談などで脚色・潤色が加へられたらしい。
例へば鼠小僧。義賊ではなかつたんだつて。盗んだ金は自らの遊興費に使つてゐたといふ。それなら普通の泥棒ですな。千両箱を担ぐシーンが時代劇によく出てくるけれど、あれは17㎏強あるさうです。簡単に担げるものではないと、苦言を呈してゐます。
また、森の石松。史実では遠州森の生まれではなく愛知県三河産で、なほかつ隻眼でもなく両目がちやんとあつた。それを講釈師の神田伯山なる人が講談向きに変更して、さらに広沢虎造が浪曲化しました。以後その設定で定着した模様であります。
ほかにも「宇都宮釣天井は真赤な偽り」とか、「国定忠治は成金農家のドラ息子」など、興味深く読める話が詰つてゐます。
そして行間から新しい時代劇への不満が読み取れるのであります。どうどう。

最後に味岡喜代治氏との対談形式で「時代劇女優番付」を披露します。戦前編と戦後編に分けて作成してゐますが、さすがに戦前編の女優は馴染が薄いので、わたくしは口を挟む余地はないのであります。
しかし戦後編は...ちよつとこの人は過大評価では?とか、なぜあの人の名前が無い?とか余計なことを考へますね。
ま、さうやつてボヤキながら読むのも一興と申せませう。
正編も早く入手して読まねば...

時代劇博物館〈2〉 (現代教養文庫)/島野 功緒

¥530
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人は「話し方」で9割変わる
人は「話し方」で9割変わる (リュウ・ブックス―アステ新書)/福田 健

¥840
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人は「話し方」で9割変わる
福田健【著】
経済界(リュウ・ブックス アステ新書)
2006(平成18)年2月発行


本当に人は話し方で変はれるのか。そもそも何が変はるといふのでせうか。
行動が変はる? それとも性格が変はる? 結果的に人生が変はるといふのか。
話すといふ行為は、スピーチにせよおしやべりにせよ難しいものであります。

著者は「話し方研究所」なる会社を立ち上げた人。読んで字の如しといふネイミングですな。
しかし、本書は単純に話し方を教へる本ではありませんね。会話の実例なんかが紹介されてゐますが、それはあくまでも一例を示しただけで、読者としてはその会話に至るまでの考へ方が重要になるのでせう。
即ち、目の前の相手と如何なる人間関係を構築したいのかを自問し、それによつて初めて会話の内容が決まると申せませう。

私見では、スピーチよりも平時のおしやべりの方が数倍難しいかと。スピーチは「スキル」として習得出来る部分が多いと思はれますが、おしやべりはまさにアドリブ。目前の話し相手との会話は、頭をフル回転しなければうまくいかぬものです。
何だか疲れるね。気のおけない人との会話はあまりさういふことを考へなくても良いのではないでせうか。

では本書は無価値なのかといふと、とんでもない。ビジネスの場はもちろん、親しくはないけれど顔を合はせざるを得ない人たちとのつきあひ方のヒントが詰つてゐます。
わたくしの場合ですと、同じマンションに暮らす住民たちとの会話に応用してゐます。
ま、「9割」といふのは言葉のアヤと申せませう。あまり拘泥せぬやうに...







日本人の知らない日本語3
日本人の知らない日本語3 祝! 卒業編/蛇蔵

¥924
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日本人の知らない日本語3 祝!卒業編
蛇蔵&海野凪子【著】
メディアファクトリー刊
2012(平成24)年3月発行


オヤ知らぬ間に三冊目が出てゐましたか。「祝!卒業編」といふことは、これで打ち止めでせうか。
それもいいでせう。潔い。
大魔神シリーズも三作で終つたお陰で傑作といはれたし、大菩薩峠の映画も三部作が丁度良い。でもハナ肇の馬鹿シリーズは三作だけでなしに、もう少し続いて欲しかつたな。山田洋次監督が渥美清さんと組んぢやつたからね。わたくしは今でも、ハナ肇の寅さんを夢想しますよ。(むろん渥美さんは渥美さんで最高なのだが。)

今回の内容で「うんうん」と実感するもの。
その一。「外国人学生が知つてゐる文型と語彙だけ使つて会話する」
以前もどこかで書きましたが、わたくしも近所の中国人相手に断続的に日本語を教へたりします。言葉に詰まつて思はず「えーつとね...」なんて言ふと、「えーつと、とは何ですか?」と質問されます。
その時は咄嗟に「ネガネガ...(那个那个)」と口に出ましたが、相手は「わかつた!」と納得してくれました。本当にわかつたのかどうか。カトリーヌ先生のやうにうまくはいきません。

その二。「書き順よりも正しい漢字を覚えませう」
書き順にこだはるあまり、却つて学習能率を阻害してはゐないでせうか。
忘れもしません、小学四年生の頃。国語の授業で「熊」といふ新出漢字が出ました。小四にしては画数が多く、難しい漢字です。
しかし担任のU先生は、動じることなく「む・つき・でんでん・ひ・ひ・でんでん」と書けばいいのだと喝破したのであります。レッカ(灬)を左右に分割し、でんでんと表現するなどカッコいいではありませんか。
今でも「熊」といふ字を見ると、脳内で「むーつきでんでんひーひーでんでん」とリフレインしてゐます。

最後に卒業生が紹介されます。わたくしの好きな中国人・王さんもその一人で、寂しいのであります。
そして最後の最後に袋とじ。どうやら三作目で打ち止めではなく、続きが海外であるやうです。新展開ですな。
期待七割、不安三割といつたところでせうか。