源氏川苦心の快楽書肆
古い本を探しては読みふけつてゐます。よければお付き合ひくださいな。
自民党―この不思議な政党
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自民党-この不思議な政党
居安正【著】
講談社(講談社現代新書)刊
1984(昭和59)年10月発行


3年ぶりに自由民主党なる政党が政権与党に返り咲いたのださうです。ほほう。
自らのダラシナサから、民主党とかいふ政党に政権を譲り渡してゐましたが、今度はまた相手の敵失から主役の座が転がり込んできたのであります。
なんだかんだで生き延びる不思議な団体。結局国民から支持されてゐるといふことでせうか。

居安正著『自民党-この不思議な政党』では、そんな謎だらけの自民党について考察してゐるのです。
「自民党をめぐる不思議」で指摘されてゐる項目は、本書から30年近く経つた今でも変らない。
まづ自民党の結党の経緯から説明し、その歴史を概観します。その存続には派閥が大きく寄与してゐるといふことです。

度重なる汚職や派閥抗争などで何度も国民をうんざりさせた割には、これだけの大所帯が分党もせずに、結果的に団結をして危機を乗り切つてきたといふ事情は驚嘆すべきところです。民主党の分裂騒ぎを見るにつけ、不思議な思ひがいたします。

実は大学時代、他所の大学まで著者の講義を聴きに行つたことがありまして、懐かしく思ひながら読んでゐました。さういふ個人的事情から読んだものです。悪しからず。

自民党―この不思議な政党 (講談社現代新書 (747))自民党―この不思議な政党 (講談社現代新書 (747))
(1984/10)
居安 正

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はだしのゲン
はだしのゲン 第1巻 青麦ゲン登場の巻はだしのゲン 第1巻 青麦ゲン登場の巻
(1984/01)
中沢 啓治

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はだしのゲン 第1巻 青麦ゲン登場の巻
中沢啓治【著】
汐文社刊
1975(昭和50)年5月発行


週刊少年ジャンプで連載されてゐた頃は、プレイボールや包丁人味平などを愛読する一方、はだしのゲンはあまり読んでゐませんでした。
しかしその後、単行本が学級文庫に収められたのを機に、本格的に読んでみて衝撃を受けたのであります。恐らく小学四年生か五年生の時分。あまりになまなましい被爆の描写に息を飲んだのです。
中沢啓治さんは、あへてありのままを描くことで、「ピカドン」の恐怖を伝へやうとしたのでした。その効果は十分すぎるほどです。

ゲンの父は戦争反対を唱へる信念の男。しかしそのお陰で家族までが「非国民」呼ばはりされ、ゲンの一家は周囲から迫害されるのであります。何だか、昔の話とは思へないね。今でもありさうな話。
そして8月6日を迎へ、広島に原爆が投下されます。ゲンの一家も被爆し、ゲンの父、姉、弟は家の下敷きになり命を落とすのであります。このシーンは何度見ても切なくなります。

わたくしのやうな、戦後何十年も経つて生れた世代にも「戦争はオソガイものだ」といふメッセイジは痛い程伝はります。中沢啓治さんが亡くなり、語り部がまた一人去つてしまひました。
今後は、戦争を体験してゐない世代が伝へていかねばならぬ時代を迎へるのでせう。
追悼の意を込めて取り上げてみました。

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裁判官が日本を滅ぼす
裁判官が日本を滅ぼす (新潮文庫)裁判官が日本を滅ぼす (新潮文庫)
(2005/10)
門田 隆将

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裁判官が日本を滅ぼす
門田隆将【著】
新潮社(新潮文庫)刊
2005(平成17)年10月発行


裁判官が日本を滅ぼす。まあ何と過激な書名でせうか。
今までにも、裁判官の好い加減さを弾劾した書物に目を通したことがありますので、ある程度問題意識は持つてゐました。裁判官の国民審査も、毎回自分なりに各裁判官の過去の判決などを調べ、×を記すのであります。
ちなみに今回(12月16日)は、6名の裁判官に×をつけてしまつたことを告白するものです。

そんなわたくしですが、それでも本書の内容には慄然としますな。
文庫版のカヴァーには「各個の事情を顧みぬ判例主義、相場主義、無罪病、欠落した市民感覚、正義感の欠落、倣岸不遜」とあります。散々な書かれやうですが、残念ながら事実なのでせう。

少々ヒステリックで断定的な物言ひが気になりますが、司法の現状を世間に広く知らしめ弾劾するといふ役割を果たした点で、まことに画期的な一冊と申せませう。
解説の櫻井よしこさんも、裁判官には個人的恨みもあつてか絶賛してゐます...

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中国語の学び方
中国語の学び方中国語の学び方
(1999/10)
相原 茂

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中国語の学び方
相原茂【著】
東方書店刊
1999(平成11)年10月発行


中国語の入門書かと思つたら、さうではなく、どうやらある程度齧つた人たち向けの本のやうです。
中国語は日本人にとつて馴染みやすい。漢字を使用する言語なので、何となく意味がつかめてしまふ(と感じる)のではないでせうか。
しかし初歩を終へると、たちまち突兀たる壁にぶちあたるのであります。
そんな人たちのために、本書は指針を示してゐると申せませう。

著者は「中国語 発音よければ 半ばよし」といふ標語を掲げてゐます。本音は「すべてよし」ださうです。
確かに中国語の発音は難しい。
中国の標準語は普通話(プートンホア)といひますが、母音子音ともに、日本語にはない音が多く有ります。
中でも「そり舌音」は難しい。特にわたくしと付き合ひのある中国人は、皆「そり舌音」を駆使しないので、わたくしも全然上達しません。「shi」「zhi」「chi」をそれぞれ「si」「zi」「ci」の「舌歯音」と同様の発音をしてゐるやうです。

また、上達には金をかけるか、時間をかけるかどちらかしかないと説きます。切ないのであります。
ある程度自分を追ひつめる状況に置かないといけないやうですね。
教科書などの教材を高いと思つてはいけないのださうです。で、教科書は同じものを三冊づつ買ふべしと。何故三冊なのかは、本書を読めば分かる。でも三冊は痛いなあ。

講演口調で書かれてゐるので、まことに分かりやすいのであります。本文は何故か縦書きですが。
肩の力を抜いて、ぼちぼちやりませうと言はれてゐるやうです。
中国語学習者は一読してみませう。たちまち読了します。

田園の憂鬱
田園の憂鬱 (新潮文庫)田園の憂鬱 (新潮文庫)
(1951/08)
佐藤 春夫

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田園の憂鬱
佐藤春夫【著】
新潮社(新潮文庫)刊
1951(昭和26)年8月発行
1996(平成8)年8月改版


いやはや、まことに憂鬱であります。
作者自身がモデルと思はれる主人公が、都会から逃れるやうに郊外へ出て来た訳ですが、とにかく鬱々としてゐます。
随行した女性は女房のやうですが、正式な夫婦ではなささうです。彼女も幸薄さうだ。
イヌも連れて来てゐます。フラテとレオの二匹。近所に何かと迷惑をかけてゐますが、飼ひ主たちにあまり反省の色は見られません。それどころかまるで自分たちが被害者のやうな物言ひであります。

「彼」は心の病を患つてゐます。しかしこの環境では事態は好転しさうにありませんな。はたせるかな幻聴幻覚症状がひどくなるのであります。
そして後半に繰返される「おお、薔薇、汝病めり!」のフレイズ。彼自身が発してゐるのに、まるでどこか別の場所から聴こえてくるやうな感覚。
そして、あたかもTVドラマが後半になるとCMが挿入される頻度が高くなるやうに「おお、薔薇、汝病めり!」を連発します。薔薇は「そうび」と読ませるのであります。

...文学史的に見れば「記念碑的名作」となるのでせうが、今読むとその藝術至上姿勢が苦しい。もつと言ふと、笑ひを誘はれるほどであります。
坪内逍遥の小説の会話を、現在の我我が読むと大爆笑であります。無論坪内逍遥は読者を笑はせやうとして書いた訳ではありません。
『田園の憂鬱』もそれに近い存在になつてゐるのではないかと感じました。現役選手から古典の棚に収められる作品といふか。

まあ、それも良いでせう。

消えた駅名
消えた駅名 駅名改称の裏に隠された謎と秘密 (講談社プラスアルファ文庫)/今尾 恵介

¥760
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消えた駅名―駅名改称の裏に隠された謎と秘密
今尾恵介【著】
講談社(講談社+α文庫)刊
2010(平成22)年12月発行


駅名が改称される場合、おほむね改悪であることが多いと感じます。無論個人的な意見ですが。
改称の理由として多いのは、観光客目当てに有名観光地の名を付す場合と、自治体の地名に駅名を合はせる場合が大半を占めるのではないでせうか。
前者は、「○○温泉」への改称駅がその主流であります。しかし「陸中川尻」が「ほっとゆだ」に変つた時は仰天したものです。
後者は「加久藤」→「えびの」や、「平」→「いわき」など。我が愛知県では「古知野」→「江南」、「阿野」→「豊明」などがあります。

知名度をあげやうとして改称する場合もあります。「弟子屈」→「摩周」とか。大横綱大鵬を輩出した土地なのだから、堂堂と弟子屈を名乗つて欲しかつたと思ふのはわたくしだけでせうか。ああ、さうですか。
わたくしの住む豊田市の「挙母」→「豊田市」も少し恥づかしい。固有の地名といふものに鈍感な土地柄なのか...

今尾恵介著『消えた駅名』には、さういふ改称されて消滅した駅名を、全国をブロック分けして北から紹介してゐます。
欲張つて二百数十もの駅を取り上げてゐるため、一駅一頁といふコムパクト編集となつてゐます。勢ひ一駅ごとの掘り下げは浅く、内容としても単調な印象なのが残念であります。
網羅的な編集よりも、もう少し駅数をしぼつて読み物に徹した方が好いのでは。

とは言へ、初めて知る事項も多く、何よりも真面目で実直な語り口が好いですな。手引書として割り切つてしまへば特に不満もありますまい...