源氏川苦心の快楽書肆
古い本を探しては読みふけつてゐます。よければお付き合ひくださいな。
歴史の流れ
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歴史の流れ
林健太郎【著】
新潮社(新潮文庫)刊
1957(昭和32)年10月発行


歴史の流れ。大きなタイトルであります。壮大な西洋史をこの薄い一冊の文庫本で著さうといふのですから。
昭和32年の発行としてありますが、あとがきによると実際は終戦間もない昭和21-22年に執筆されたものださうです。
日本が敗戦に打ちひしがれてゐた時期に書かれたと思ふと、感慨深いものがあります。

今年(2014年)没後十年を迎へた林健太郎氏が、かつて出版社の求めに応じて「一気呵成に」西洋史をまとめたものです。林健太郎と聞いても怖がる必要はありません。実にコムパクトに、ピテカントロプス・エレクトゥスから第二次大戦の終了までを、(一部を例外とし)私見をはさまずに俯瞰します。超圧縮版なので、出てくる事象はすべてSランクの重要事項ばかり。改めて歴史の興味深さを教へてくれるのです。ノオトを取りながら読みすすめれば、理解も深まる。
かつて高校時代に山川出版社の歴史教科書で学んだことを思ひ出し、懐かしくなりました。

やはり古代が特に面白い。人類誕生からローマ帝国あたりは、豊穣なる物語を語り聞かされてゐるやうな陶酔境を味はへます。現代に近付くに連れて、今の世界が抱へる問題点の原点が見えてきて生々しくなるのです。
著者も認めるやうに、宗教改革以降を簡単に慌しくまとめた記述になつてゐますが、今回は(もう次回はないけど)これで良い。本稿の最後を、「原子力の平和利用」が「明るい希望」であると締めてゐるのもご愛嬌であります。これ以上現代を執筆してしまふと、別の書物になる恐れがありますからな。

ぢやあ又お会ひしませう。

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神楽坂ホン書き旅館
神楽坂ホン書き旅館 (新潮文庫)神楽坂ホン書き旅館 (新潮文庫)
(2007/10)
黒川 鍾信

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神楽坂ホン書き旅館
黒川鍾信【著】
新潮社(新潮文庫)刊
2007(平成19)年10月発行


書名にある「ホン」とは、映画などの脚本のこと。映画人はホンとかシャシンとか独特の用語を駆使するやうです。
日本映画の全盛時は、製作本数が現在とは比較にならぬほど多く、俳優もスタッフもフル回転でした。東映のごときは、世界記録を作るほどの量産体制に入つてゐたのであります。

そんな時代ですから、当然ホン書き(脚本家)たちも大忙し。ひとつ上げればすぐまた次の作品、と人気作家になるほど受注が多かつたのです。映画会社はそんなホン書きたちに仕事をさせるため、旅館にカンヅメにするわけですが、そのホン書き専門の旅館を「ホン書き旅館」と呼称したわけですな。

本書の舞台となる「和可菜」もさういふホン書き旅館のひとつであります。牛込は神楽坂といふ通好みの立地もあり、ここを定宿にする作家も多かつたといふことです。有名な旅館ださうですが、無学なわたくしは知りませんでした。長く生きてゐますと、いろいろなことを知ることが出来ますなあ。

著者の黒川氏は、「和可菜」の女将・和田敏子さんの甥に当たる人物。渋る女将を口説いて、「和可菜」の歴史を書物として残したいといふ念願を本書で果たしたのであります。女将の実姉は和田つま、即ち女優の小暮実千代だといふことです。おお。この女優さん、実に天真爛漫な人ですねえ。

映画界の衰退とともに同業者が次々と店を畳むなか、「和可菜」は女将や女中頭のカズさんたちの努力により孤軍奮闘を続け、いつの間にか神楽坂の顔みたいになつてしまつた。

常連客のプライバシーを侵害することを恐れた女将でしたが、時効と考へたのか結構きはどいエピソオドも披露されてゐます。しかし書かれた人々も(物故者も多い)今やステイタスと捉へれば好いのではないかと思ひます。
本書に登場する主な人物を順不同で列挙しますと、内田吐夢・山田洋次・浦山桐郎・深作欣二・早坂暁・野坂昭如・市川森一・竹山洋・村松友視・石堂淑朗・金城哲夫・色川武大・伊集院静...いやいや大層な顔ぶれであります。

ホン書きから見たもう一つの日本映画史にもなつてゐます。映画好きも文学好きも納得の、まことに愉快な一冊と申せませう。

時刻表ひとり旅
時刻表ひとり旅 (講談社現代新書)時刻表ひとり旅 (講談社現代新書)
(1981/06/17)
宮脇 俊三

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時刻表ひとり旅
宮脇俊三【著】
講談社(講談社現代新書)刊
1981(昭和56)年6月発行
2013(平成25)年5月復刊


処女作『時刻表2万キロ』を発表して以来、著者の宮脇氏に対し、「時刻表のどこが面白いのですか?」といつた質問が増えたさうです。宮脇氏は時刻表の魅力を縷々説明するのですが、中中うまく相手に伝へられず隔靴掻痒の感を抱くとのこと。そこで一度時刻表の魅力、面白さを細かく詳しく語つてみたいと思ひ、本書執筆の運びとなつた訳です。

したがつて本書の対象はテツではなく、ごく一般の読者を想定して企画されました。
しかしその試みが成功してゐるのは第一章のみで、第二章以降はすでにその執筆意図を忘れたかのやうな暴走振りであります。おかげで実に愉快な読み物になりました。
特に第二章「国鉄全線大集会」は、国鉄各線を擬人化し、各線が手前勝手な発言をし、それぞれの線区がいかなる特徴を持つのかを浮かび上がらせてゐるのですが...ごく一般の読者には解りませんよ。これはどう見ても、テツが読んでニヤニヤする内容であります。

第四章の「ローカル線10傑」は、「ローカル線を旅したいけど、お勧めはどこ?」といふやうな問合せが多いことから発表したやうです。やはり人口密度の低い過疎地を走るローカル線(つまり大赤字線)ほど魅力的といふ傾向がありますので、この10傑の中で、「天北線」「湧網線」「能登線」「阿仁合線」「宮津線」「松浦線」「宮原線」「高千穂線」の8線は、すでに国鉄(⇒JR線)としては廃線となつてゐます。第3セクタア鉄道として生れ変つた線も結構ありますが。

付章の「つくりたい駅、走らせたい列車」は、メイニヤの本領発揮といつたところです。妄想の域を出ないのですが、通勤新幹線の駅は、本庄早稲田駅など一部で実現してゐると申せませう。寝台新幹線は、作つて欲しいですな。無理だけど。また、山手線電車の最後部を展望車に、といふ提案は面白いのですが、著者自身も「まあ、ぜひやれ、というほどのことではないから、どうでもいいけれど」とナゲヤリになるほど現実性は薄いですなあ。

しかし組合問題満載だつた国鉄時代と違ひ、現在はJR各社が特長のあるユニイク列車を誕生させてゐます。宮脇氏の面白提案を上回る車両の出現を望むものであります。

では今夜はこんなところでご無礼します。

長寿遺伝子を鍛える
長寿遺伝子を鍛える (新潮文庫)長寿遺伝子を鍛える (新潮文庫)
(2011/12/24)
坪田 一男

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長寿遺伝子を鍛える
坪田一男【著】
新潮社(新潮文庫)刊
2011(平成23)年12月発行


「長寿」は解る。「遺伝子」もよく聞く言葉であります。しかし「長寿遺伝子」とは何でありませうか。そもそもそんなものが実在するのでせうか。
著者によると、確かにそれは存在し、さらに鍛へることが出来るのださうです。この一冊で、詳しく解説してくれます。ところで著者の本職は眼科医といふことですが、いはゆるアンチエイジングの研究でも専門家のやうです。

日本人は男女とも世界トップクラスの長寿国ですが、それは即ちリタイヤ後の余生が長くなることを意味します。昔は会社の定年と平均寿命が近く、引退後の生活にスポットが当たる事はまれだつたのですが、現在は60歳定年として、男性でも20年は生活しなくてはならない。しかしただ長生きするだけでは勿体ないですな。いかに健康に余生を送れるかが問題であります。その鍵を握るのが、書名にある長寿遺伝子を鍛へる必要があるといふことです。

序盤で、長寿研究の歴史を素人にも解り易く解説してくれます。PCRマシーンとかサーチュインとかNADとか、わたくしなぞは初めて目にする用語が多くて、次の章に進む頃には忘れてしまふくらゐです。
第5章・第7章で紹介される「カロリーリストリクション」=「カロリス」なる概念があります。一般の「ダイエット」とは違ひ、摂取する栄養素のバランスは保つたまま、総カロリーを70%に抑へるといふものらしい。著者だけの提言ではく、世界の専門化の共通認識なのださうです。
また、万能細胞としてのES細胞やiPS細胞の誕生についても言及があります。これを読むと、やはりSTAP細胞みたいな夢の細胞はさう簡単に出来るものではないだらう...と思つてしまひます。ま、いいか。

老化に伴ひ、身体のあちこちに色色不具合が出てきますが、「年齢のため」と諦めることはないと著者は説きます。老化と病気を混同してはいけないといふことですな。医者でさへ「老化現象だからしかたがない」と述べる人が多いのですが、それは「ひどい年齢差別」だと著者は主張してゐます。そして、著者は「現段階で生物学的な人間の寿命と言われる125歳までは、絶対生きるつもりでいる」(第10章より)と高らかに宣言するのです。スゴイ人ですね。

とにかく刺激に満ちた、実に面白い一冊であります。わたくしの文章では面白さが伝はりませんが、何よりも読後に勇気が湧いてくるのでした。
では御一党さま、ご無礼します。

「鉄」道の妻たち
「鉄」道の妻たち―ツマだけが知っている、鉄ちゃん夫の真実 (交通新聞社新書)「鉄」道の妻たち―ツマだけが知っている、鉄ちゃん夫の真実 (交通新聞社新書)
(2010/12)
田島 マナオ

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「鉄」道の妻たち―ツマだけが知っている、鉄ちゃん夫の真実
田島マナオ【著】
交通新聞社(交通新聞社新書)刊
2010(平成22)年12月発行


テツの生態を紹介した書物は多いが、その妻たちは何をしてゐるのか。何を考へてゐるのか。さういふ調査をした一冊であります。まあ色んな出版物が発行される中、本書みたいなものが在つても不思議はなからう、てな感じですかね。

テツどもは基本的に単独行動をします。自らの趣味を全うするためには、全てを犠牲にして、可処分所得のほとんどをテツ活動のために次ぎ込むのであります。そこに他人の入り込む余地はありません。まして女性同伴などは想像もつかないのです。一般的な傾向として、生活に女性の影が濃くなつてくるにつれて、テツ活動は鳴りを潜めてゆくものであります。だから中中結婚しないテツは多い。結婚したらこの優雅な趣味生活に終止符を打たねばならぬかも知れないといふ恐怖があるからです。

しかし結婚しても活動の幅を縮小しながらでもテツを続ける人もゐます。かかる果報者は、必ずデキた(理解のある)女房に恵まれてゐる筈。本書ではさういふ天使のやうな奥様方を紹介してゐるのであります。

著者は「アットホーム鉄」「海外のめり込み鉄」「オレ様鉄」「似たもの夫婦鉄」「今では仕事鉄」の五つに分類し、それぞれの妻を取材、紹介してゐます。
取材を受ける時点で、人よりも大らかな人となりが想像できますが、それにしても本書に登場する妻たちはデキてゐる。ふうん。一般に女房とは、こんなに優しいものなのかね。いや、深い意味はございませんが。

しかし「オレ様鉄」の旦那たちはとんでもない思考回路をしてゐますね。社会不適格者といふか。かういふ男性さへ妻は不満を抱きながらも支へてゐる。立派ですなあ。かかる迷惑な「オレさま鉄」は、結婚しない方が好いね。周囲に厄災をふりまく。『開運!なんでも鑑定団』で、高価な骨董品を買ひ込み、生活費まで趣味の世界につぎ込んで家族の顰蹙を買つてゐる人たちを連想しました。

本文もさることながら、各章の間に挟まれる「「鉄妻」調査結果」なるアンケート集計も興味深い。インタビューした著者も、答へた鉄妻たちも、ご苦労さまでした。
それでは又お会ひしませう。

複合汚染
複合汚染 (新潮文庫)複合汚染 (新潮文庫)
(1979/05/29)
有吉 佐和子

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複合汚染
有吉佐和子【著】
新潮社(新潮文庫)刊
1979(昭和54)年5月発行
2002(平成14)年5月改版


早いもので有吉佐和子さんが世を去つて30年になります。本当に月日が経つのは早い。時蠅矢を好む。
没後30年といふことで、出版界では色色な動きも出てをります。その一番の目玉は、初めて書籍化された(集英社文庫)、『花ならば赤く』でせう。何と53年も前に雑誌に掲載されながら、その後一度も単行本にならなかつたといふ「幻の作品」であります。わたくしもまだ未読でありますので、早く読まんと欲するところです。

ここでは、個人的に思ひ入れの強い『複合汚染』の登場であります。なぜそんなに思つてゐるかといふと、わたくしの読書史上、初めて読んだ現役作家が有吉佐和子さんで、その作品がまさに『複合汚染』だつたのです。
それまでは年少の読者らしく、漱石鴎外芥川太宰と王道を歩んでゐましたが、必然の流れとして、現存する同時代作家の作品にも手を伸ばすことにしたのです。
どういふ経緯か覚えてゐませんが、とにかく初めての現代小説といふことで緊張しながら、同時にワクワクしながら読み始めたのであります。

タイトルから内容はおほむね想像がついてゐたものの、一読して衝撃を受けてしまひました。
まだ「公害」が喫緊の重要問題となつてゐた頃なので臨場感もあります。
いやあ、少年のわたくしには刺戟が強すぎたのですねえ、読後しばらくの間、わたくしは食欲を失くし、歯磨き粉を駆使せず歯を磨くやうになつたのであります。

当時の厚生省は、有害物質とわかつても中中使用中止にせず、それどころか直ちに健康被害が出るものではないとして基準値以下なら使用を認めるケースが多かつたとか。
しかし基準値以下と言つても、ほかの物質と化合すると、想定外の毒物に変化することがあり(要するに「複合汚染」なのですが)、さういふ場合についてはまつたく手付かずの状態だつたさうです。
実害が出てゐるのに、学者先生は「実験をしてみないと分かりません」を繰り返すばかり。著者は取材しながら苛立ちを隠しません。本書が警鐘を鳴らしてゐるのは、大雑把に言つてさういふ部分でせう。それで、学者は確定したことしか言へないが、私は小説家だから書くと宣言する著者。知つてしまつた小説家の責任感みたいなものが窺へるのです。

この作品を新聞の小説欄に連載したといふのが、更に驚きであります。著者は「必ず読者を掴んでみせる」と宣言して始めた連載ですが、そのためにさまざまな工夫がなされてゐます。
例へば冒頭で、市川房江さんの選挙応援の話から入るところ。読者を厭きさせないやうに、青島幸男氏や石原慎太郎氏や若き日の菅直人氏などを登場させ、話の興味をたくみに公害問題へと誘ふのであります。
選挙の話が尻切れトンボだとか、構成に難があるとか批評も聞きますが、これは作者も計算済みでせう。希代のストオリイ・テラアがそんな破綻を来す筈がありません。映画の一寸長いアバンタイトルみたいなものと、わたくしは解釈してゐます。

そして「横丁の御隠居」の存在が大きい。医者や学者の難しい専門話を、そのまま読者に提供しても「あのオ、わかりません」となるのは必定。そこで素人の読者が分かり易いやうに、御隠居との会話のキャッチボールの中で噛み砕いて解説してゆくのです。小説家であるといふことが大きな武器となつてゐますね。

小説と呼びにくい小説ではありますが、読後に受ける感銘はやはり文学作品を味はふ時のそれであります。こんな破天荒な作品を生み出す作家が53歳でこの世を去つたといふのも、返す返す無念ですなあ。せめて昨今の復刊ブウムで、新しい読者が増えることを望むわたくしであります。
ぢやあまた。

「できません」と云うな
「できません」と云うな―オムロン創業者立石一真 (新潮文庫)「できません」と云うな―オムロン創業者立石一真 (新潮文庫)
(2011/03/29)
湯谷 昇羊

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「できません」と云うな―オムロン創業者立石一真
湯谷昇羊【著】
新潮社(新潮文庫)刊
2011(平成23)年3月発行


「オムロンとわたくし」
健康診断に行くと、毎回言はれることがあります。「血圧が高い。改善せよ」
しかし何となく看過してしまひ、いたづらに時を過ごしてきました。若い頃は、医者からもあまり強く言はれなかつたこともあり、まあ難しく表現すれば愚図愚図してゐたのであります。

ところが年数も経ち、わたくしも目出度く中高年と呼ばれる年頃になりますと、健診も回を重ねるごとに医者からの圧力が強くなつて参りました。今回は特に、怖い女医さん(小保方晴子さんが肌荒れをしたやうな感じ)に「いつ動脈硬化を起こしても不思議はない。一刻も早く病院へ行き、治療を始めよ。自分でも血圧計を買つて、毎日計測するのだ。この数値で、今まで何もしなかつたとは信じ難い。体重も減らせ」とまくしたてられました。

早速近所の病院で薬をもらひ、さらに血圧計を購買するため家電量販店に立ち寄りました。色色種類がありますね。
下は三千円を切るものから、上は二万円近いものまで価格帯も広い。さすがに二千円台は計測結果の信憑性に不安がありますので、六千円クラスのものを選びました。メーカーはやはりオムロンであります。

半信半疑で飲み始めた薬ですが、これが効果があるのですね。毎日朝晩計測するのですが、たちまち数値が改善されてゆきます。かうなると計測が愉しくなり、必要以上にオムロンの世話になつてゐます。座右にオムロン。



『「できません」と云うな』は、オムロン創業者である立石一真の言葉。立石電機の総帥として名前は聞いてゐましたが、かくもスゴイ人物であるとは、本書を読むまで知りませんでした。
「ズボン・プレス」に始まり、無接点スイッチ、マイクロスイッチ、電子信号機、自動食券販売機、駅の自動改札システム、電動義手、電子医療機器...大手でもまだやらなかつた事業を、まだ中小メーカーだつた立石電機が次々と実現してゆくさまは、感動すら覚えるのであります。

立石一真は、会社の利益を第一に考へなかつた。社会に貢献できる企業を目指したのであります。言ふは易いが、中中難しい。大企業となつた会社が、利益を社会へ還元するといふケースと違ひます。倒産の危機も迎へるほどの中小メーカー時代からそれを実行してゐるのですから。
ゆゑに、どんな注文も断らなかつた。大手企業もまだ出来ないものでも、非常識なほど短い納期でも、まづは「やつてみませう」とばかりに引き受ける。お陰で技術陣は大変だつたらうが、その分鍛へられたことでせう。

松下幸之助や本田宗一郎に匹敵する技術系経営者と言はれますが、本書を読めばそれがすんなりと納得できるでせう。立石一真の生き方を多くの人に知らせたいといふ著者の望みを十二分に叶へる一冊と申せませう。
ぢや、さよなら。