源氏川苦心の快楽書肆
古い本を探しては読みふけつてゐます。よければお付き合ひくださいな。
殺意の風景
殺意の風景 (光文社文庫)殺意の風景 (光文社文庫)
(2006/05/11)
宮脇 俊三

商品詳細を見る

殺意の風景
宮脇俊三【著】
光文社(光文社文庫)刊
2006(平成18)年5月発行


人と会ふごとに、「暑いですな」と極りきつた挨拶。しかし実際暑いのであります。
古老たちは、口を揃へて「かういふ暑さは昔はなかつた。日中はどんなに暑くても朝方は涼しいものであつた」と述懐します。
呼応して「さうさう、だから宿題は朝の涼しいうちに済ませよ、と親にいはれたものだが、今では午前中から30度を越す暑さとくる。子供も可哀さうです」「子供といへば、うちの孫もテニスの部活でこの暑いのに出かけて行つたよ。何もこんな日にやらせなくても...」「高校野球も屋根のないところで良くやるよ。そのうち倒れる子が出るよ、きつと」...

今年の暑さと『殺意の風景』の間には、まつたく関係はありませんが、怒りすら沸く猛暑にひとこと言つてをきたかつたのでした。

さて本書は宮脇俊三氏が遺した唯一のフィクション作品であります。ミステリー仕立てでありますが、凡百のそれのやうに、死体が浮かんで敏腕刑事が解決に当たるとか、素人探偵が警察に煙たがられながら名推理で謎を解くといつたものではありません。

第一話の青木ヶ原から最終話の須磨まで、ごく普通の人間が「殺意」を抱く舞台として、有名観光地(有名とはいへない地名もありますが)が取り上げられてゐます。恐らく宮脇氏が読者に「推薦」したい場所として選んだのではないでせうか。
そこで繰り広げられる、何気ない人間模様のドラマ。派手な描写に慣れてしまつた人には、物足りないと感じるかもしれません。しかし読み進めていくうちに、登場人物と一緒になつて、「風景」の中で弄ばれてゐる自分を発見することでせう。

宮脇氏には、かかる作物をもつと遺してもらひたかつたと、一掬の涙とともに思ふのであります。

にほんブログ村 本ブログへ
にほんブログ村
スポンサーサイト
コメント
コメント
コメントの投稿
URL:
本文:
パスワード:
非公開コメント: 管理者にだけ表示を許可する
 
トラックバック
トラックバック URL
http://genjigawa.blog.fc2.com/tb.php/111-56bfb3a8
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
トラックバック