源氏川苦心の快楽書肆
古い本を探しては読みふけつてゐます。よければお付き合ひくださいな。
土 (新潮文庫)土 (新潮文庫)
(1950/06/13)
長塚 節

商品詳細を見る


長塚節【著】
新潮社(新潮文庫)刊
1950(昭和25)年8月発行
1967(昭和42)年12月改版


『土』といふのは、実にぴつたりの表題と申せませう。
著者の地元である茨城県の結城地区を舞台に、リアルな農村の生活を活写してゐます。ドキュメンタリイかと思ふやうな臨場感なのです。
その描写は、時として過剰な丁寧さをもつて記述される。読むのに時間がかかります。
では読みながら退屈するのかといふと、さうではありません。なぜかペイジを捲る手は止まらないのでした。

主要登場人物は、勘次・お品の夫婦とその子供であるおつぎ・与吉の姉弟、そしてお品の父で勘次とはうまくいつてゐない卯吉。
といつても特段に感情移入できる人物は少なく、むしろ農村の風景や習俗、農民たちの生態といつたものが中心でございます。

突然、苦しんで呆気なく他界するお品。貧しさ故、盗癖が治らない勘次さん。おつぎに辛く当ります。そのおつぎも成長するにしたがひ、頼もしい存在となつてきます。父親を叱る場面も多い。家のために娘盛りを犠牲にしてゐます。与吉はまだ使へねえな。卯吉さんは自らの狷介さも原因とはいへ、不遇な晩年を過ごしてゐます。
かうして見ても、誰一人として生活に満足出来てゐないのであります。
そして、与吉のいたづらにより、災禍に見舞はれる一家...何といふことでせう。

巻末に夏目漱石の推薦文が収録されてゐて、お徳感があります。漱石もいふやうに、必ずしも読んで娯楽になる小説ではありません。娘には必ず読ませやうといふ漱石。面白いからではなく、苦しいから読めと伝へる心算であると。
普段からぶうぶう言つて、何かと不満を述べる人たちが読めば、少しは大人しくなるかな。そもそも手に取らないかな?

にほんブログ村 本ブログへ
にほんブログ村
スポンサーサイト
コメント
コメント
コメントの投稿
URL:
本文:
パスワード:
非公開コメント: 管理者にだけ表示を許可する
 
トラックバック
トラックバック URL
http://genjigawa.blog.fc2.com/tb.php/112-bd8ca2ff
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
トラックバック