源氏川苦心の快楽書肆
古い本を探しては読みふけつてゐます。よければお付き合ひくださいな。
思考のレッスン
思考のレッスン (文春文庫)思考のレッスン (文春文庫)
(2002/10/10)
丸谷 才一

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思考のレッスン
丸谷才一【著】
文藝春秋(文春文庫)刊
2002(平成14)年10月発行


早くも丸谷氏の一周忌であります。それを期に、このたび文藝春秋より『丸谷才一全集』全12巻の刊行が開始されるさうです。
寡作作家とはいへ、12巻は少ないなあと思つたら、小説は全作収録するさうだが、評論のたぐひは主要作品のみらしい。すると軽めのエッセイ類は仲間はずれでせうか。
第一回配本は小説『女ざかり』ださうです。欲しいなあ。独身時代なら間違ひなく購買を決意したでせうが、作品のほとんどを所持してゐるので、逡巡するところであります。

それはともかく『思考のレッスン』について。
インタヴュー形式で、丸谷流の思考術が明らかにされる愉快な一冊であります。「レッスン」は全部で6講。

レッスン1は「思考の型の形成史」。少年時代の丸谷氏が不思議に思つたことの一つに、日本の小説はなぜ不景気なことばかり扱ふのかといふのがあります。小説の神様・志賀直哉を有り難がらず「ゲンナリしてしまうんだなあ」。すでに大勢に迎合しない姿勢を見せてゐますね。

レッスン2「私の考え方を励ましてくれた三人」。この三人とは、中村真一郎・バフチン・山崎正和の面々ださうです。加へて、つきあひの深かつた吉田健一氏から得たことなども語つてゐます。

レッスン3「思考の準備」。考へるためには、まづ本を読め。思考の準備として読書の効用を説くのであります。しかし面白いと思はない本を無理して読むのは逆効果であると。

レッスン4「本を読むコツ」。同じ内容の本であつても、活字の組み方や注釈の挿入位置などの相違で理解度が違ふとの指摘は凡人のわたくしでも肯くところであります。書物自体を有り難がる風潮にも抗して、丸谷氏は本を自分が駆使しやすいやうに破つたりするさうです。単なる情報源と割り切つてゐるのですね。

レッスン5「考えるコツ」。考へる上で大切なのは、いかに良い問を自分自身で発するか、そしてそれをいかに上手に育てるかといふこと。人は疑問が湧いても、それを「なぜ?」と持続させずに、なんとなく放擲してしまひますからねえ。仮説を立てることの重要性も説きます。「定説に遠慮するな」「仮説は大胆不敵に」と。

レッスン6「書き方のコツ」。文章を書きながら悩むのは愚の骨頂らしい。文章はまづ頭の中で完成させてから書くべしとの助言があります。耳が痛いのであります。

とにかく、他者の思想をなぞるのではなく、自分でとことん考へる習慣が大切なのですね。まとまつた時間があると、普段読めない本を読まう、と考へがちだが、時間のあるときは読書ではなく、考へる時間に充てよ、とかの指摘も新鮮でした。

ところで、インタヴュアーは誰なのでせうか。どこかに書いてありますかね?

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