源氏川苦心の快楽書肆
古い本を探しては読みふけつてゐます。よければお付き合ひくださいな。
チャイコフスキー・コンクール
チャイコフスキー・コンクール: ピアニストが聴く現代 (新潮文庫)チャイコフスキー・コンクール: ピアニストが聴く現代 (新潮文庫)
(2012/02/27)
中村 紘子

商品詳細を見る

チャイコフスキー・コンクール ピアニストが聴く現代
中村紘子【著】
新潮社(新潮文庫)刊
2012(平成24)年2月発行


チャイコフスキー国際コンクールとは、四年毎にモスクワで開催される、まことに権威のある音楽コンクールであります。その権威の高さの割には歴史は案外新しく、第一回開催は1958(昭和33)年ださうです。開催国ソ連の威信をかけたコンクールで、その歴史はさまざまなエピソオドに事欠きません。

著者の中村紘子さんは、1982年の第七回コンクール以来、審査員として度々招かれてをります。本書は1986年、第八回コンクールの模様を、6月のモスクワに降り立つところから最終審査の結果が出るまで、著者の批評メモを織り交ぜながら、わたくしのやうな素人にも分かりやすく叙述されてゐるのであります。その内幕はまことに興味深い。

参加資格は案外ゆるく、年齢が17-32歳ならそれほど厳しい制約はないさうです。もつとも、それなりの自信と実績がないと、出ても恥をかくだけで、実際さういふ人も中にはゐるみたいです。出しちやふ師匠がいかんよね。
また、「ツーリスト」と呼ばれるパフォーマーもゐて、それは何かといふと、珍奇ないでたちで愛嬌をふりまき、肝心の演奏は噴飯物で、審査員たちも笑ひを噛殺すのに難儀する演奏者のことださうです。アメリカ人に多く、わが日本からもそれに次いで多いらしい。うーん。

また、現代のコンクール事情についての考察や、日本におけるクラシック音楽の問題点にも触れてゐます。
今時のコンクールの目的は、はふつてゐても勝手に出てくる神童や天才を期待するのではなく、「正常な才能のための定期的発掘装置とでもいうべきものなのだ」(本文より)
著者もいふ通り、何となく淋しい目的ではありますが、一般の音楽愛好家からすると、さういふ人材もやはり多く発掘してもらひたい喃。

日本はクラシック音楽の「鑑賞者」または「享受者」としては一流レヴェルに達しつつあるといっても、あくまでそれは消極的な意味であって、本来のよき「鑑賞者」としての積極性を残念ながらいまだ持つに至っていない、とでもいえよう。(本文より)

本書から30年近く経つのですが、日本はよき「鑑賞者」として変貌を遂げたのでせうか。
ま、わたくしなんぞは難しいことは考へずに、ただ聴くのみですがね...

にほんブログ村 本ブログへ
にほんブログ村
スポンサーサイト
コメント
コメント
コメントの投稿
URL:
本文:
パスワード:
非公開コメント: 管理者にだけ表示を許可する
 
トラックバック
トラックバック URL
http://genjigawa.blog.fc2.com/tb.php/160-fdcbdd0d
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
トラックバック