源氏川苦心の快楽書肆
古い本を探しては読みふけつてゐます。よければお付き合ひくださいな。
全線開通版・線路のない時刻表
全線開通版 線路のない時刻表 (講談社学術文庫)全線開通版 線路のない時刻表 (講談社学術文庫)
(2014/03/11)
宮脇 俊三

商品詳細を見る

全線開通版 線路のない時刻表
宮脇俊三【著】
講談社(講談社学術文庫)刊
2014(平成26)年3月発行


『線路のない時刻表』は、1986(昭和61)年に新潮社から刊行され評判をとり、その三年後には新潮文庫化されました。
国鉄末期に、赤字ローカル線を大量に廃止することが決まつたのですが、一方では開通する当てのないローカル新線の建設工事は進められてゐたのです。
国鉄として開業しないことが明白な路線を作り続ける...子供が考へてもをかしな話であります。

予算は一点集中ではなく全国に総花的に割り当てられたので、結局開通する路線はなく、用地の買収も終り路盤もほとんど完成しながら開通せずにそのまま朽ち果て、大いなる税金の無駄遣ひとなることが予想されてゐました。
ま、さういふローカル線を今さら作ること自体が無駄な事業だと思ふ人もゐるでせうが、それを言ひ出したら話が進まぬので脇へ置くことにしませう。

我らが宮脇氏は、さういふ事情とは別に鉄道メイニアとして開業を待ち続けたのに、その見通しが立たぬのは精神衛生上悪いといふことで、未成線の路盤なんかを歩くことで実際に乗つた気にならうと勘考しました。
本書に収められたのは、収録順に挙げると、智頭線・北越北線・三陸縦貫線・樽見線・宿毛線・瀬戸大橋・青函トンネルの七編であります。

地元の自治体などに取材しますが、当時の状況としては開通の可能性が低い路線が多かつたので、どうしても俯き加減の話になりがちです。怒り、虚しさ、諦め...さういふ状況でも淡淡と仕事をする人たちを描いてゐます。
宮脇氏はせめてもの思ひで、「宮脇俊三作 国鉄非監修」の想定時刻表を自作し掲載したのでした。情報が少ない中で、中中良く出来てゐるのではないかと。

ところが、巻末の「『三陸鉄道』奮戦す」にもあるやうに、三陸縦貫線を第三セクター方式で引継いだ三陸鉄道が発足し、世間の耳目を集めます。
以降、廃線予定の路線を、地元自治体や企業を中心とした第三セクターが引き受け運営するケースが相次いだのであります。わが地元の「愛知環状鉄道」もその一つ。

結局、本書で登場した路線のうち「瀬戸大橋」「青函トンネル」はJRグループがそのまま引継ぎ、その他の5路線はすべて新たな会社が開通させるといふ喜ばしい結果となつたのであります。
さうなると、宮脇氏は当然乗りに行き、「その後」をリポートすることになります。それが本書『全線開通版・線路のない時刻表』なのです。
全線開通版は、1998(平成10)年に講談社文庫から出てゐるのですが、このたび何と講談社学術文庫から復刊したのであります。学術文庫...学術か? 平均単価の高い学術文庫から出すことで、価格を吊上げやうとの魂胆か。

各章の最後に、開通後のルポが追加されてゐますが、いかんせん分量が少なく(各3-4ページくらゐ)物足りないですな。いはば本書の最大の「売り」の部分なのに。
しかし当時宮脇氏は既に晩年に相当する時期であつたことを勘案すれば、よくぞ書いてくれたとも申せませう。

学術文庫3月新刊。みんな読みませう。

にほんブログ村 本ブログへ
にほんブログ村
スポンサーサイト
コメント
コメント
コメントの投稿
URL:
本文:
パスワード:
非公開コメント: 管理者にだけ表示を許可する
 
トラックバック
トラックバック URL
http://genjigawa.blog.fc2.com/tb.php/164-980927c5
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
トラックバック