源氏川苦心の快楽書肆
古い本を探しては読みふけつてゐます。よければお付き合ひくださいな。
日出る国の工場
日出る国の工場 (新潮文庫)日出る国の工場 (新潮文庫)
(1990/03/28)
村上 春樹、安西 水丸 他

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日出る国の工場
村上春樹/安西水丸【著】
新潮社(新潮文庫)刊
1990(平成2)年3月発行


安西水丸氏、脳溢血にて永眠。71歳。昨今、早すぎる死と申せませう。
我が家に水丸さんの著書は有つたかなあ、と書棚を調べたら、すべて村上春樹さんとの共著でした。
そこで『日出る国の工場』。随分と古い本です。(わたくしが所持するのは1987年の平凡社版)

安西さんによると、やはり村上さんとの共著である『象工場のハッピーエンド』を出して以来、ふたりは工場見学の面白さに目覚めたのだとか。
もつともこのコンビは、いかにも工場工場したところへは行きません。まづは人体標本工場。医療用教材としての人体模型のヴァリエイションには驚愕するところです。

次いで結婚式場。これを工場と捉へる人はさうありますまい。ケーススタディとして、鈴木家と沼津家の新郎新婦がいかにして自分たちの結婚式・披露宴を創り上げていくのか。相談カウンターの荒木さんが次々とたたみかける工程は、なるほど無駄のないプロセスを経る工場と言へなくもない。

三箇所目は消しゴム工場。村上氏も述べるごとく、本書の中では我我が連想する「工場見学」にもつとも近いものかも知れません。平泉成さんのナレーションが聞えてきさうな。(←東海地区限定か?)
もつとも文字通りの消し「ゴム」はもう少数派で、プラスチックの「字消し」が主流だと。2014年現在ではいつたいどうなつてゐるのか。

四箇所目は岩手県にある、有名な「小岩井農場」。一読して、なるほどこれはまさしく工場だなむと感嘆することしきりであります。しかしそれ以上に、日本の酪農の将来がすでに危ぶまれてゐる状況が問題提起されてゐます。唐突ですが、米国と交渉中の甘利くんにも頑張つて欲しいね。

続いての五箇所目は「コム・デ・ギャルソン」。意外だつたのは、コム・デ・ギャルソンはデザイン制作と営業だけの会社だといふことで、実際の裁縫は外部に発注されるのださうです。現在も同じかどうかは知りません。現実に、村上さん安西さんが案内されたのは江東区の町工場でした。

さらに六箇所目。「テクニクスCD工場」。テクニクスといふブランド名も懐かしいですが、村上春樹さんがコンパクト・ディスクとは何かを解説するあたり、時代を感じさせます。専門的な話にはちよつとついていけませんが、水丸さんがいふ「いろいろと すごいです」が全てを語つてゐるやうな。

そして最後は「アデランス」。男性用かつらのメーカーとして有名ですが、工場潜入した人は当時少なかつたでせう。
わたくしも頭髪に関しては、末期的状況と申しますか、すでに何をしても手遅れ状態なので、いつそ丸刈りにしていろいろなかつらを試して遊びたい感じです。もつと安ければいいけど、工程を見てゐると、この価格もやむを得ないのでせうね。

村上さんの本文も、水丸さんのイラストも「もつと気楽に行かうぜ」と語りかけるやうで、癒される工場見学本であります。村上さんの文章も最近とは少し違ふみたいで、人気作家だけれど、現在のやうに大物扱ひされてゐない時代の気軽さが感じられます。たまにちと恥ずかしい表現もありますが...

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