源氏川苦心の快楽書肆
古い本を探しては読みふけつてゐます。よければお付き合ひくださいな。
猛牛(ファンソ)と呼ばれた男
猛牛(ファンソ)と呼ばれた男―「東声会」町井久之の戦後史 (新潮文庫)猛牛(ファンソ)と呼ばれた男―「東声会」町井久之の戦後史 (新潮文庫)
(2011/10/28)
城内 康伸

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猛牛(ファンソ)と呼ばれた男―「東声会」町井久之の戦後史
城内康伸【著】
新潮社(新潮文庫)刊
2011(平成23)年10月発行


サブタイトルに―「東声会」町井久之の戦後史―とあります。
町井久之(韓国名:鄭建永)といふ人は、在日韓国人の二世で、敗戦後日本のどさくさの中、武力でもつて台頭してきました。
まあ一般的にはヤクザ屋さんのボスとして捉へられてゐるのではないでせうか。自ら組織した「東声会」も完全に暴力団のイメエヂであります。
暗黒街で政財界の大物とつながりを持ち、隠然たる力を示した男...

『猛牛と呼ばれた男』は、その町井久之氏の生涯を追つた実録ノンフィクションであります。
もともと彼に対する知識はほとんどなかつたわたくしなので、明かされる意外な素顔に「ほほう」となつたものです。
そもそも町井に思想的影響を与へたのは、石原莞爾の「五族協栄」「民族調和」の精神だと言ひます。その理念を実現せんと「東声会」を結成します。
しかし組織が大きくなるにつれて、末端のチンピラが暴力事件を繰り返すことで、同会は世間からは完全にやくざと同一視されるのでした。

町井の本音としては、暴力の世界ではなく実業界で一目置かれる存在を目指してゐたフシがありますな。児玉誉士夫・大野伴睦・河野一郎といつた面々とのつながりも、将来の実業界進出を意識してのことかも知れません。
東声会を解散したのも、もう暴力の世界とは無縁だとアピールしたかつたからでせう。

しかし、世間はやはり町井=やくざの印象を払拭できなかつたし、事業も甘いものではありませんでした。
あまりにも短い絶頂期のあとは、転落するのみで、描いた理想との乖離に懊悩したのではないでせうかね。

城内氏の正攻法かつ地道な取材により、我我はもうひとつの戦後史を俯瞰することができるのであります。骨太の一冊と申せませう。

ぢやあまた。ご無礼します。

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