源氏川苦心の快楽書肆
古い本を探しては読みふけつてゐます。よければお付き合ひくださいな。
旗本退屈男
旗本退屈男 (文春文庫)旗本退屈男 (文春文庫)
(2011/09/02)
佐々木 味津三

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旗本退屈男
佐々木味津三【著】
文藝春秋(文春文庫)刊
2011(平成23)年9月発行


いつの間にか復刊してゐた『旗本退屈男』。全11作を一冊にまとめたお徳用であります。
旗本退屈男とは、徳川直参旗本・早乙女主水之介のあだ名といふか、別名といふか、通り名みたいなものですね。
元禄の太平な世の中、腕が鈍つてしようがない、事件があれば「退屈の虫」が騒ぎ出すのであります。
年齢は永遠の33歳。浅見光彦と同じ(彼は満年齢だが)ですが、当時の33歳は今よりもおつさんのイメエヂでせうね。

剣の奥義は篠崎竹雲斎の諸刃流、「青眼崩し」なる技を会得してゐます。トレードマークは額の中央にある、「天下御免の向かふ傷」と称する三日月形の傷であります。この傷だけで相手を圧倒することさへあるのです。
17歳の菊路といふ妹がゐて、その菊路と恋仲の霧島京弥なる若い侍が屋敷に出入してゐます。京弥さまは外見は優男風ながら、剣術の腕もなかなかのものであります。

その主水之介が、退屈の虫に誘はれるままに、京・三河・身延・仙台・日光へと足を向けます。まあストオリィ的には、特筆すべきほどのものはありません。すべからく退屈男の豪快かつ痛快なるけれん味が魅力といふべきでせう。
せりふ回しも独特で面白い。わたくしは読後しばらく「ヘゲタレよ喃」「わははは、ずんと面白いぞ」「ひとねぢりねぢ切つてつかはさう」など口癖になりました。

さて、その旗本退屈男を当代一の当り役としたのが、市川右太衛門。北大路欣也さんの父君であります。文庫カヴァーの表紙も、(おそらく)あへて右太衛門に似せてゐないのですが、それでゐて右太衛門を連想させる容貌の侍が描かれてゐます。なかなかうまい。

手許に『東映時代劇ビデオのすべて』なる小冊子があるのですが、その中で右太衛門本人が「旗本退屈男」について語つてゐます。
その証言によると、近鉄上本町の書店で本書を見つけて即購買した右太衛門は、仕事場のある奈良あやめ池までの電車の中で読みふけり、直ちに自ら映画化を決めたのださうです。

これほどの痛快娯楽剣戟小説、もし右太衛門の目に留まらなくても、別の誰かが映像化したでせうが、これほど国民的人気を得るまでの存在になつたかどうか。
実に幸福な出会ひであつたと申せませう。

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