源氏川苦心の快楽書肆
古い本を探しては読みふけつてゐます。よければお付き合ひくださいな。
半島へ、ふたたび
半島へ、ふたたび (新潮文庫)半島へ、ふたたび (新潮文庫)
(2011/12/24)
蓮池 薫

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半島へ、ふたたび
蓮池薫【著】
新潮社(新潮文庫)刊
2011(平成23)年12月発行


北朝鮮といふ国は、金正恩なる御仁に代替りしてから、その無鉄砲さに拍車がかかつてゐるやうに見えます。
彼の親父の時代は、無鉄砲ながら対立国との「駆け引き」に長けてゐた。我儘を言ひ、駄々を捏ねれば条件を引き出せたのであります。一応「外交」らしきものはありました。
しかしながらこの肥満児ぼんぼんのやることといつたら、挑発の意図が那辺にあるのか、とんと分からない。たぶん本人も分かつてゐないのでは、とすら思はれるのであります。口汚く罵るだけでは、何の見返りもないでせう。こんな状態で拉致問題の進展はあるのかとヤキモキしてしまひます。

蓮池薫さんの『半島へ、ふたたび』といふ書名を見て、「え、また北朝鮮へ行つたのか?」と思つた人はわたくしだけではありますまい。
ところが「半島」には変りはないが、北朝鮮ではなく韓国訪問記なのでした。紛らはしい。意外にもこの旅が初めての韓国行きださうです。わづか八日間の旅行にしては、とにかく色色な場所へ出入し、多くの人に会ひ、ギュッと濃縮された密度の濃い旅となつたやうです。

二部構成になつてゐて、第一部がその韓国旅行記「僕のいた大地へ」。もちろん違ふ国なのですが、どうしても陸続きになつてゐる(拉致された)北朝鮮を想起してしまふやうです。そもそも同じ民族なのだから当然といへば当然。
兄の蓮池透さんの著書『奪還』では、帰国後しばらくは北朝鮮による薫さんの「洗脳」ぶりについて書かれてゐましたが、本書を読む限りでは一般的な日本人の視点から客観的に見つめてゐるやうに思ひます。
しかし拉致問題が解決しない中、未だ語れぬこともあるのでせう。本当に書きたいことはまだあるのでは? と読みながら感じてしまふのです。

第二部は「あの国の言葉を武器に、生きていく」。蓮池さんは、友人(翻訳家の佐藤耕士氏)の骨折りもあつて、新たに翻訳家として歩むことになりました。かういふのは、仮令チャンスがあつても、教養といふか知識といふか、さういふ素養がないと出来ない仕事であります。
その奮闘ぶりは時に壮絶、時にユウモラスで、感心したり微笑ましかつたり。失はれた24年間といふ時間を埋めるかのやうに翻訳に熱中する姿には感動すら覚えるのでした。

「まだ帰還しない拉致被害者が多くゐるのに、自分だけかくも順調で良いのだらうか?」といふ気持ちが根底にあるのでせう、手放しの喜びや満足はあへてその表現を避けてゐるやうに見えます。
事件の完全解決により、心から笑へる日が、一日も早く来ることを願ふばかりであります。

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