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戦後プロ野球50年

戦後プロ野球50年―川上、ON、そしてイチローへ (新潮文庫)戦後プロ野球50年―川上、ON、そしてイチローへ (新潮文庫)
(1994/12)
近藤 唯之

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戦後プロ野球50年―川上、ON、そしてイチローへ
近藤唯之【著】
新潮社(新潮文庫)刊
1994(平成6)年12月発行


今年の燕球団は、評論家諸氏によりますと断突で最下位の予想となつてゐます。
まあ仕方がない。昨年あれほどの惨状を呈したといふのに、特段の補強もせず、故障者も相変らず多数抱へる状況で昨年以上の成績をあげられるとは、素人でも思ひますまい。
しかも頼みの綱である、ライアン小川君が離脱。お先真暗とはまさにこのことであります。案の定九連敗といふ泥沼にもはまりました。

しかし昨年と違ふところは、打線に厚味が出てきたところです。昨年はバレ君一人が頼りで、相手投手もバレを歩かせてをけばあとの打者は恐れるに足らず、と安心しきつてゐたやうだね。
今年は、ミレッジ君がまたゐなくなつちやつたけれど、川端君が戻り、ハタケが復調し、雄平君がブレイクしかけてゐます。山田君比屋根君荒木君も良い。中村君は相川君から正捕手の座を奪はんとする勢ひ。バレの負担が軽くなつたと存するものです。今後に期待しませう。

と、燕の話ばかりしてもしようがない。近藤唯之氏の『戦後プロ野球50年』であります。
無論近藤氏のことですから、ありふれた編年体のプロ野球史を書くはずがありません。サブタイトルにもあるやうに、川上哲治からON、現在のイチローまで、自ら取材した内容を中心に述べてゐます。
その奥底には、プロ野球の隆盛を願ふ思ひと、それを支へる選手や裏方への敬意が詰まつてゐるやうに思はれます。まるで相対して胡坐をかき、酒でも酌み交はしながら聞いてゐるやうな心持になるのであります。

「黒い霧」で永久追放になつた池永正明投手の無念、「あぶさん」永淵洋三右翼手の粋な引退後の人生、王貞治一塁手とハンク・アーロンの本塁打競争の内幕(よく書いてくれました)、大杉の本塁打に抗議した上田利治監督とその家族の実直さ、そして「柳川事件」の犠牲者となつた柳川福三外野手。子供に「お父さんは昔、相撲取りだつたのだよ」と嘘をつく心中を思ふと、涙が出ますなあ。

近藤節はナニハブシ、といはれても良いぢやありませんか。まことに人間臭い、人情味のある「プロ野球戦後史」と申せませう。まだ入手出来るのかどうかは分かりませんが―

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コメント

わたしも
わたしも近藤さんの著作は愛読しております。
あの語り口がさらに変化して 笠智衆みたいになれば、さらに味が出るなぁ。
Re: 笠智衆
筆者名を隠しても近藤さんと分かる文体ですよね。
笠智衆ふうの語り口...いいね。志村喬でもいいかも。

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