源氏川苦心の快楽書肆
古い本を探しては読みふけつてゐます。よければお付き合ひくださいな。
タクシードライバー日誌
タクシードライバー日誌 (ちくま文庫)タクシードライバー日誌 (ちくま文庫)
(1986/10)
梁 石日

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タクシードライバー日誌

梁石日【著】
筑摩書房(ちくま文庫)刊
1986(昭和61)年10月発行

8月5日は「タクシーの日」であります。日本で最初に運賃メーターを装着したタクシーが登場したのが、大正元年のこの日ださうです。案外古い話ですな。
で、かういふ書籍を取り出してみたのですが、既に3日が経過してゐました。わたくしもやることが一一にすいので、自分でも厭になりますな。

梁石日氏といへば、『夜を賭けて』『血と骨』といつた作品で名の知られた作家でありますが、デビュウ前にタクシー運転手を十年間も勤めたのださうです。
事業に失敗した著者は負債を抱へ、家族を残し単身東京へ出るのですが、再起のきつかけを掴めません。あまつさへ三日間水だけの生活が続いた時に、偶然目にしたタクシー乗務員の募集広告に応募したといふことです。
募集の問合せの電話代や履歴書を買ふお金すらなく、着てゐたオーヴァーを強引に質に入れて金を作つたといふ有様でした。中中壮絶な話であります。

都内の中小タクシー会社の運転手になつた著者。給与体系や労働環境など、業界の内幕を教へてくれます。長時間勤務、不安定な収入、横暴かつ傍若無人な客のあしらひ、交通事故の恐怖...30年ほども前の話ですが、現在でも劇的に改善されたといふ話は聞きません。
昨今「ブラック会社」なる存在が盛んに喧伝されますが、タクシー会社といふのは業界丸ごと問題の「ブラック業界」とも申せませう。
ただ、一説には現役ドライバーは同業者が増えるのを嫌ふので、必要以上にタクシードライバーのマイナス点をアピールしてゐるとも。まあ会社の規模の大小や、勤務地が大都市であるか地方都市なのかで待遇や勤務形態は違ふやうですがね。

...ううむ。せつかくの「タクシーの日」に因んだ本でしたが、何かと後向きになつてしまふ本書は相応しくなかつたかも知れません。少なくとも本書を読んで「よし、俺も一丁タクシー乗務員に転身したる!」と叫ぶ人は少ないだらうなあ。
タクシーは社会そのもの。矛盾だらけの現代社会のしわ寄せを受けてゐるのがこの業界なのでせうか。
しかし読み物としてはすこぶる面白い。入手の機会があれば一読をお勧めするものであります。

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