源氏川苦心の快楽書肆
古い本を探しては読みふけつてゐます。よければお付き合ひくださいな。
雷蔵好み
雷蔵好み (集英社文庫)雷蔵好み (集英社文庫)
(2006/07)
村松 友視

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雷蔵好み
村松友視【著】
集英社(集英社文庫)刊
2006(平成18年)7月発行


市川雷蔵が映画界にデビュウしたのが1954(昭和29)年、即ち今年で60周年であります。CSの各チャンネルでも雷蔵映画は花盛り。その若すぎる死からでも既に45年経過してゐます。現在でも衰へぬその人気の秘密とは何でせうか。
かく言ふわたくしも雷蔵映画は大好きで、かつて『雷蔵、雷蔵を語る』とか、『市川雷蔵かげろうの死』などといふ本を語つたことがあります。

本書『雷蔵好み』は、作家村松友視氏の眼を通して語られる雷蔵評伝または雷蔵論もしくは雷蔵小説であります。
市川雷蔵は前述の通り1954(昭和29)年に銀幕デビュウを飾り、1969(昭和44)年に37歳の若さでこの世を去る訳ですが、この期間は日本映画全盛時代とすつぽり被つてゐます。
同時期には同じ大映では勝新太郎、東映では中村錦之助・大川橋蔵、日活では石原裕次郎などのスタアが活躍してゐました。

村松氏は、これらのスタアは(今のTV時代のスタア俳優も)、どんな役を演じてもその俳優でしかないと言ひます。例へば片岡千恵蔵の場合でも、どんな役を演じても片岡千恵蔵であると。市川右太衛門しかり、長谷川一夫しかり、三船敏郎しかり。これを村松氏は「金太郎飴現象」と呼称しました。

この現象から脱皮しやうともがいた俳優もゐました。東映の錦之助や橋蔵などがさうで、役者としての新境地を求めて「異色作」と呼ばれる作品に挑戦したのです。しかし成功せず、従来のファンも失ふといふ結果になつたのです。それほど金太郎飴は美味しいのでせうね。

ところが市川雷蔵はあつさりとこの壁を破つたやうです。例へば、三島由紀夫『金閣寺』を映画化した「炎上」。
すでに時代劇スタアとしての地位を築いてゐた雷蔵に、周囲はこの映画への出演に否定的でした。何しろ、吃音症の丸刈り青年の役です。せつかく今まで築き上げた雷蔵のイメエヂに傷が付く、従来のファンが離れて行くぞ...
しかし雷蔵は期待以上の演技で、役者としての新しい抽斗を増やすことに成功したのでした。

つまり雷蔵は日本の男優の中では、ひとつのイメエヂに染まらない稀有な存在だつたと申せませう。普段の姿がスタア然としてゐなくて、まるで公務員みたいな風貌であつたといふギャップも原因のひとつでせうか。
そんな雷蔵さんの魅力を、自身もファンである村松氏が愛情を込めて綴る一冊なのです。

ひとつだけ気になる些細なこと。雷蔵は出生時の本名は「亀崎章雄」で、その後「竹内嘉男」さらに「太田吉哉」と改名してゐます。この件をもつて、雷蔵は三度本名が変つたと著者は表現してゐます。しかし正しくは三度ではなく二度ではないでせうか。揚げ足取りみたいですが、気になりましたのでね。
では、ご無礼します。

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