源氏川苦心の快楽書肆
古い本を探しては読みふけつてゐます。よければお付き合ひくださいな。
ヴィヨンの妻
ヴィヨンの妻 (新潮文庫)ヴィヨンの妻 (新潮文庫)
(1950/12/22)
太宰 治

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ヴィヨンの妻
太宰治【著】
新潮社(新潮文庫)刊
1950(昭和25)年12月発行
1969(昭和44)年11月改版
2009(平成21)年3月改版


「ヴィヨンの妻」の映画が公開されて話題になつてゐるやうです。私は観てませんが。
小説家・大谷は優しくて器量よしの妻がありながら、毎日遊び歩いてゐます。
挙句に、行きつけの店で酒代を溜めて、借金を踏み倒さうとするばかりか、店の酒まで勝手に持ち出すありさま。いけませんねえ。
妻は夫の借金を返すためにその店で働き始め、瞬く間に客の間で人気者になるのでした...

本書にはそのほか「桜桃」「家庭の幸福」「トカトントン」など最晩年の傑作群が収録されてゐます。
「桜桃」はその昔、石坂浩二さんの主演でテレビドラマになりました。実に太宰つぽい雰囲気を出してそれはそれは不味さうに桜桃を口に運ぶ演技が忘れられません。子供より親が大事。

市井の常識人からすると、これらの作品に登場する主人公は皆だらしがなく、自分本位で、極めて唾棄すべき人物として映るのでせう。「苦悩」だつて? 馬鹿言つてんぢやないよ、この甘つたれがといふ感じでせうか。
一連の作品を私小説と看做して、太宰治本人への攻撃をする人も未だに多いのです。
確かにいづれも死の予感を感じさせる陰がありますが、私はそれ以上に読者へのサービス精神が健在であることに感嘆するものであります。プロ意識と申せませうか。芸術は「心づくし」である、「奉仕」であると述べた人の作品らしい。
太宰を「卒業」したと思つてゐる人たちに、大人になつた今こそ読むべしと訴へたいですね。

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