源氏川苦心の快楽書肆
古い本を探しては読みふけつてゐます。よければお付き合ひくださいな。
敵意の環
敵意の環 (1981年) (集英社文庫)敵意の環 (1981年) (集英社文庫)
(1981/09)
清水 一行

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敵意の環
清水一行【著】
集英社(集英社文庫)刊
1981(昭和56)年9月発行


清水一行氏の訃報を知り、残念でたまらず手にした一冊であります。79歳、死因は老衰ださうです。 今月15日に亡くなつてゐたさうで、なぜか1週間ほど発表が遅くなつてゐます。
この数年はもう新作を見ることもなかつたのですが、やはり一時代を画した超人気作家だけに、今回の報道には喪失感を覚えるのであります。

一流商社マン・多木省吾は、最近目に見えない「敵意」を感じてゐました。そこで、おでん屋兼調査事務所所長の松永靖に調査を依頼します。松永は元捜査二課の刑事です。調査対象の人物は、何と自分自身。自分の周辺を調査してもらふことで、この得体の知れない「敵意」の正体が分かるのではないだらうか...といふことです。
松永は、こんな依頼は初めてだと訝しながらも引受けます。
ところがその後、依頼人多木の周辺には、異常事が相次いで起きるのであります。狙はれてゐる! どうやらこの調査を快く思はない人物がゐるやうなのです。それが「敵意」の元なのか...

清水氏といへば企業小説。本書でも商社の内情が活写されてゐますが、それよりもミステリーとしての側面が大きい長篇小説です。
そして「敵意」なるものの本質、「火のないところに煙はたたない」といふ言葉のいい加減さ、その陰で多くの人が傷ついてゐるといふ現実。「これが、もし自分に起つた出来事ならば」と誰でも思はざるを得ない恐怖。
夢中になつて無意識のうちに、ページをめくる手がどんどん早くなつてゆくのであります。

清水氏の作品中でも、決して代表作でも有名な作品でもないのですが、さすがに「一行ブランド」、水準は高いのであります。安心して読める娯楽作と申せませう。改めてその死を悼むものであります。

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