源氏川苦心の快楽書肆
古い本を探しては読みふけつてゐます。よければお付き合ひくださいな。
私の途中下車人生
私の途中下車人生 (角川文庫)私の途中下車人生 (角川文庫)
(2010/02/25)
宮脇 俊三

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私の途中下車人生
宮脇俊三【著】
2010(平成22)年2月刊
角川学芸出版(角川文庫)

『私の途中下車人生』は、宮脇俊三氏の著作で私が唯一入手してゐないものでした(絵本除く)。1986(昭和61)年に講談社から発売されたのですが、その後絶版となり、文庫化もされず、角川書店の『宮脇俊三鉄道紀行全集』にも収録されず(全集ではないぢやん)、なかば幻の作品となつてゐたのです。
それが今年になつて、角川文庫の1冊として復活したのであります。それでやうやく手に入れることができました。

本書は他の著作と違ひ、聞き手に対して宮脇氏が語る形式であります。語り下ろしなどと呼ぶやうです。
宮脇俊三さんが自分の事を綴る文章は今までにもありましたが、かういふ編年体といふか時系列で語る自伝は、他にないでせう。『時刻表昭和史』は終戦の時点で終つてゐるし。従つて終戦から、中央公論社を退社するあたりまでの事情は、一番詳しい書物といふことになります。

宮脇氏は戦後、東大を卒業したのちに中央公論社へ入社、定年前に紀行作家への華麗なる転身― といふ印象なので、途中下車人生ではなく、順風満帆そのものの人生ではないかと思ひながら読み始めたのですが、私の知らぬ事実が次々に明らかになり、なるほど看板に偽りはないと考へ直しました。
東大の西洋史学科を卒業してゐますが、それ以前に地質学科に入学してゐたとか、「中央公論」「婦人公論」編集長時代には、実績を残せず閑職にまはされたとか。
それでもやはり中公時代は、華やかな活躍の方が印象に残ります。北杜夫『どくとるマンボウ航海記』をベストセラーにし、『世界の歴史』シリーズを大成功させ、中公新書を創刊したのは、誰あらう宮脇さんなのであります。中公新書のラインナップに歴史関係の本が多いのも、宮脇俊三さんの影響であります。

本書を読みながら、まるで目の前で宮脇さんが例のぼそぼそした口調で、低く聞き取りにくい声で語つてゐるかのやうな錯覚に陥る書物であります。愉快な1冊。

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