源氏川苦心の快楽書肆
古い本を探しては読みふけつてゐます。よければお付き合ひくださいな。
夕鶴・彦市ばなし
夕鶴・彦市ばなし (新潮文庫)夕鶴・彦市ばなし (新潮文庫)
(1954/05/24)
木下 順二

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夕鶴・彦市ばなし
木下順二【著】
新潮社(新潮文庫)刊
1954(昭和29)年5月発行
1966(昭和41)年5月改版
1988(昭和63)年12月改版


中学生の時分に山本安英さんの「夕鶴」を見せてもらつた事があります。何といふか迫力に圧倒された記憶がありますが、中学生にその本領が理解できたか疑問であります。もう少し大人になつてから再度鑑賞したいと勘案してゐましたが、叶ひませんでした。

「つう」は命の恩人「与ひょう」に恩返しをすべく女房になるのですが、「与ひょう」は周囲の欲深な仲間にそそのかされて「つう」に布を織つてくれと頼みます。お金を得て、都見物に行きたいといふのです。
「おかね」の話をする人たちの言葉が「つう」には分かりません。最初は普通に通じてゐた「与ひょう」の言葉も段段理解不能になつてゆきます。
「与ひょう、あたしの大事な与ひょう、あんたはどうしたの?」に始まる「つう」の台詞。泣かせますが、その思ひは結局「与ひょう」に届かないのであります。それにしても美しく、悲しい台詞であります。男としては、「与ひょう」の馬鹿たれ!と罵りたい気分でございます。
「もう一枚だけ」といふことで布を織つてもらふ「与ひょう」。しかし機を織つてゐるときは決して覗いてはいけないといふ約束を破つてしまふのです。そして結局「つう」との別れを招くのでした。愚かな男。

他の収録作品。「三年寝太郎」は教科書で読みましたね。シャックリの擬音は「ギョッ」であることを知りました。「聴耳頭巾」を使つた藤六は成功に味を占めることなく、「この頭巾もあんまり使うもんではねえな」と達観してゐます。「木竜うるし」における藤六(同じ名前だ)のやうな人物は、ひとつの理想型であると存じます。「わらしべ長者」の男は、昔話のやうに、「わらスボ」に結いつけた虻をもとに甘いことを考へてゐます。衝撃の結末。「瓜子姫とアマンジャク」これは傑作! さらに「彦市ばなし」「絵姿女房」。
これらの作品群は音読したいものです。カッコイイ日本語。ある高名な作家が、木下順二のやうな美しい日本語を書ける人が標準語で芝居を書かないのは残念だ、といふ意味の事を書いてゐましたが、これはこれで良いぢやないですか...

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