源氏川苦心の快楽書肆
古い本を探しては読みふけつてゐます。よければお付き合ひくださいな。
ウルトラマン誕生
ウルトラマン誕生 (ちくま文庫)ウルトラマン誕生 (ちくま文庫)
(2006/06)
実相寺 昭雄

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ウルトラマン誕生
実相寺昭雄【著】
筑摩書房(ちくま文庫)
2006(平成18)年6月発行


表紙のウルトラマンがカツコイイのであります。思はず手にとり購買すると、内容は『ウルトラマンのできるまで』『ウルトラマンに夢見た男たち』の合本でした。道理で分厚い本である。いづれも「ちくまプリマーブックス」として刊行されたものであります。
年少の読者を想定して書かれてゐるので、まことに丁寧な記述となつてゐます。
実相寺監督が亡くなつてもうすぐ4年になろうとしてゐますが、生前は私にとつてあまり関心のある存在ではありませんでした。ちよつと独りよがりが過ぎるといふか、観客が観たい映像よりも自分が作りたい映像を優先させる印象があつたのです。

本書からひとつ例をあげませう。
当時(1960年代)、特撮の世界に飛び込む人は、大なり小なり円谷英二に憧れを抱いてゐました。実相寺氏も同様で、円谷英二氏が常にスタッフに説いた言葉を紹介してゐます。

きたならしいものはだめだよ。見ていてヘドの出るようなものや、残忍なものや、暴力だけがまかりとおるものや、気持ちのわるいものや、血まみれを売りものにするようなものはね
やはり見終わって夢が残るものじゃなきゃだめだよ。きたならしいもの、目をそむけちゃいけない現実、社会問題、......それは別のリアリズム映画がやってくれる。特撮っていうのはね、だれもが見たくても見られない光景や視点をつくりだすためにあるんだよ。どんな巨大な怪獣を出そうが、ミクロの細菌の世界に潜入しようが、日ごろ見られない夢を見せるようにしなきゃだめなんだよ

すばらしい言葉。ところが円谷英二の薫陶を受けながら、実相寺氏は怪獣デザインに関して、成田亨氏に次のやうに依頼します。

見るだにおぞましいもの。日曜の七時という一家団欒の時間に茶の間の受像器が怪獣をうつしたとき、思わず箸の手がとまるといった、生理的ないやらしさを表現してほしい

全然分つてゐないではありませんか。ところが成田亨さんはさすがに円谷氏の思想を理解してゐたため、依頼通りには作らなかつたのであります。実相寺氏はそれを怨んでゐたとか。詮無い人だなあ。

と思つてゐたら、本書では自分の思ひ込みが間違つてゐたことに気づいたと語つてゐます。どうやら成田氏に説教(?)されたやうです。もつと早く気づいてゐたら、スペル星人の悲劇は避けられたかも知れません。
ま、さういふ感じで、本書は断片的ながら、一種の円谷英二論としても読むことが出来ませう。多分特撮に詳しすぎる人にとつては、物足りないでせうが、普通の人には1960-70年代の特撮事情が分つて面白く読めるでせう。

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