源氏川苦心の快楽書肆
古い本を探しては読みふけつてゐます。よければお付き合ひくださいな。
鉄道歴史読本
鉄道歴史読本 (朝日文庫)鉄道歴史読本 (朝日文庫)
(2009/03/06)
梅原 淳

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鉄道歴史読本
梅原淳【著】
朝日新聞出版(朝日文庫)刊
2009(平成21)年3月発行


10月の声を聞き、今年もあと四分の一を残すのみとなりました。
10月といへば鉄道の日を控へます。各方面で鉄道関係の催しなどが目白押しなのです。わたくしもそのいくつかに参加せんと企んでゐます。CSの各チャンネルでも軒並み鉄映画の特集を組んでゐて、一部メイニヤのものだつた頃からすると、隔世の感があるのです。

便乗して梅原淳さんの『鉄道歴史読本』。本書は鉄道史を俯瞰するものではなく、著者が選んだ鉄道史上の20のトピックスを詳述するものです。情緒に流れず、客観的に、その事件の背景までを深く掘り下げる一冊なのです。ハードボイルド。

第1章は「日本の鉄道を変えた「そのとき」」と題して、東海道新幹線の誕生や関門トンネルの難工事などを取り上げます。いはば鉄道版「その時歴史が動いた」ですな。中でも、ねじ式連結器から自動式連結器への一斉取替えについては読み応へありです。

第2章は「高度成長期の栄光と挫折」であります。大阪万博輸送、新幹線博多延伸と国鉄斜陽化、最高時速120キロメートル化、東北本線の近代化、国鉄ハイウェイバスの誕生を取り上げてゐます。
いづれも事業も難産の末成就してゐます。一度は諦められ、外部から批判されながらも信念によつて実現に至るプロセスには、例へば石田禮助氏のやうな強力な信念と決断力、折衝力を持つ人たちがゐたことを忘れてはなりますまい。鉄道版「ルビコンの決断」かな。

第3章は「産みの苦しみ―現代への貴重な礎」。丹那トンネルの難工事、洞爺丸遭難事件、上尾事件を始めとする乗客による暴動など、国鉄暗黒史の中から学ぶ章と申せませうか。かういふ大きな犠牲から学習した上で、次々と巨大プロジェクトが展開されたのですねえ。鉄道版「プロジェクトX」ですか。ちよつと違ふか。

第4章「知られざる歴史」。これはもう「知ってるつもり?!」でせう。「政治駅」岐阜羽島や、札幌ゴムタイヤ地下鉄などの秘話が披露されます。岐阜羽島駅は大野伴睦氏の我田引鉄の賜物ではなく、それどころか彼は新幹線を予定通りの期日に開通を間に合せた功労者だといふのです。しかし駅前に聳える大野夫妻の像が誤解を増幅させたのではないでせうか。あんなもの駅前に要らないのに。

詳細なデエタに基き、硬派の文章で読者を唸らせます。案外そこらのテツは読まないかもね。
文字通りの力作と申せませう。

ぢや、この辺でご無礼します。

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