源氏川苦心の快楽書肆
古い本を探しては読みふけつてゐます。よければお付き合ひくださいな。
天の夕顔
天の夕顔 (新潮文庫)天の夕顔 (新潮文庫)
(1954/06/02)
中河 与一

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天の夕顔
中河与一【著】
新潮社(新潮文庫)刊
1954(昭和29)年5月発行
1966(昭和41)年6月改版
1996(平成8) 年9月改版
2003(平成15)年3月改版


主人公の「わたくし」が、年上の人妻への愛に一生を捧げる物語であります。

「わたくし」は当初は彼女に対して、好意を抱きながらもそれ以上のことは特段望んでゐなかつたやうに見えます。しかし彼女から、これ以上交際を続けると自分の立場が苦しくなるといはれ、以後会はないやうにしませうと切り出されると、どうやら俄然未練が湧いてきたらしい。その後、彼女の居所を探し当てては、その都度拒絶される繰り返しであります。彼女を探す執念はストーカー顔負けと申せませう。

年少の頃から思春期にかけて、恋愛をしてゐる自分にうつとりする時期が存在しますね。この「わたくし」は中高年になつてもその時期を卒業できずに過ごしてしまつたと思はれるのであります。まあこれを純愛と呼んでもいいのですが、どうも違ふやうな気がする。全体に幼さを感じさせるのであります。時代背景も関係するでせう。
山ごもりしても結局何の役に立つたのか、と突つ込みたくなります。

しかしさういふことは、この小説を読む上では枝葉末節なのでせう。
実際、緊張感のある引き締まつた文章に身を委ねてゐますと、かかる突つ込みどころまでが魅力に転じるのであります。現代人は鼻先で笑ふかもしれない恋愛ですが、新潮文庫版の改版歴を見ると、いまだに新しい読者が誕生してゐると推測されます。
そして「わたくし」を突き放すラスト。おお、何といふこと。
彼は不幸だつたのか、それとも救はれたのか。読み手によつて判断は分かれるところでせうね。

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