源氏川苦心の快楽書肆
古い本を探しては読みふけつてゐます。よければお付き合ひくださいな。
さすらい
さすらい (新潮文庫)さすらい (新潮文庫)
(2004/11)
小林 旭

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さすらい
小林旭【著】
新潮社(新潮文庫)刊
2004(平成16)年11月発行

11月3日は文化の日―ではありますが、同時にマイトガイ小林旭の(たしか)72回目の誕生日であります。
この人は「小林氏」とか「旭さん」とかいふ呼称は似合ひません。だからここでは敬称なしの「アキラ」と呼びませう。ヒーローは呼び捨てが相応しい。

『さすらい』はアキラが初めて自分を語つた本。自分のアクションの原点は「ターザン」ではないかと述べてゐますが、さういへばこの人、乱闘シーンでは必ず階段だのテーブルだの一段高い所に意味も無く上り、そして飛び降りる動作を繰り返してゐました。「あの行動は、何の意味があるの?」などと訊ねてはいけません。それがマイトガイだから。
最初は日活ではなく東映のニューフェースに応募したのださうです。しかもその時、最終審査に残つたのが高倉健さんだといふから、偶然といふのはすごい。結局健さんが採用されてアキラは落選しました。しかし後の歴史を見れば、これで良かつたのでせう。

大部屋時代の屈辱も淡々と述べます。普通なら潰されてしまふところを、この人はナニクソ精神で見返すのであります。あるいは、追ひ込まれてから真価を発揮する人物と申せませう。
ここで「やつぱり!」と思つたことがあります。『勝利者』といふ石原裕次郎の映画(本当の主演は三橋達也だと思ひますが)を初めて観た時、北原三枝が踊る舞台の観客席で、裕次郎の隣の席で拍手してゐる人物がアキラに見えたのです。何しろわづか数秒のシーンなので、その時は確認するすべがありませんでした。
ところが、本書でそのシーンについても触れてゐまして、やはりアキラ本人の出演だつたことが分かりました。顛末が笑へます。

他にも、唯一のライバルと目してゐたのが裕次郎ではなく赤木圭一郎であつたとか、美空ひばりとの結婚・離婚には山口組組長(当時)の田岡一雄氏が絡んでゐたとか、ハリウッドにスカウトされて米国で活動するつもりだつたとか、本音で語つてくれます。いやあ、映画だけではなく、アキラ本人も実にユニイクな人物ですな。まだまだ語つてほしいのであります。
アキラのファンでなくても(たぶん)面白い、痛快な本と申せませう。

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