源氏川苦心の快楽書肆
古い本を探しては読みふけつてゐます。よければお付き合ひくださいな。
白痴
白痴 (新潮文庫)白痴 (新潮文庫)
(1949/01/03)
坂口 安吾

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白痴
坂口安吾【著】
新潮社(新潮文庫)刊
1948(昭和23)年12月発行
1969(昭和44)年 2月改版
1986(昭和61)年12月改版


表題作「白痴」を含む7篇が収められてゐます。
それにしても、何とまあ無気力な主人公たちでせうか。ここまでやる気が感じられないと笑つてしまふほどであります。

「いずこへ」の三文文士、「白痴」の伊沢、「母の上京」の夏川、「外套と青空」の太平など、一見志が低い、どうしやうもない奴等ではあります。
一種の理想主義者なのかも知れません。故意に情けない姿を見せてゐるのも、堕落してもいいぢやんとばかりに挑発してゐるやうに見えます。
常に戦争の影がちらつき、明日の生命も分からぬ当時の世相も関係があるのでせう。それでも適当に諧謔を交へて、それなりに逞しく生き抜く男女の姿は善悪を超えた存在として迫るのでした。

「戦争と一人の女」「青鬼の褌を洗う女」は女性の一人称で語られる作品。戦争を歓迎する発言などを、女性の立場からさせてゐます。これは計算づくか。
ちなみに「戦争と一人の女」は、元々男性の視点から書かれてゐたさうで、本書に収められてゐるのは、その後書き直されたもののやうです。元のやつも読んでみたいのですが、高価な全集版でないと載つてゐないのでせうね。

今風の小説に慣れた読者には、少し読み辛いかもしれませんが、今でも版を重ねてゐるのも事実。人によつて意見が分かれさうな作品群と申せませう。

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