源氏川苦心の快楽書肆
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「鉄学」概論
「鉄学」概論―車窓から眺める日本近現代史 (新潮文庫)「鉄学」概論―車窓から眺める日本近現代史 (新潮文庫)
(2011/01/01)
原 武史

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「鉄学」概論-車窓から眺める日本近現代史
原武史【著】
新潮社(新潮文庫)刊
2011(平成23)年1月発行


気鋭の日本政治思想史学者・原武史氏による、哲学概論ならぬ「鉄学」概論であります。
むろん原氏のことでありますから、鉄道を語るのではなく、鉄道を介して日本の近代史を俯瞰します。
もともとNHKテキストなのださうです。私は知りませんでしたが、このたび新潮文庫の一冊として刊行されたことは、まことに恭賀すべきことであります。

全八章で構成。第一章「鉄道紀行文学の巨人たち」では、おなじみ内田百・阿川弘之・宮脇俊三の三人を比較しながら論じてゐます。確かに「巨人」と呼べるのはこの三人しかゐないでせう。後継者が見当たらないのが現代の悲劇と申せませう。

第三章は「鉄道に乗る天皇」。まさに原氏の得意分野。昭和天皇のお召列車走行路線図(戦後)を見ると、岡多線(現・愛知環状鉄道線)が記載されてゐませんね。私がまだ少年時代に、岡多線にお召列車が走つたはずなのですが。確か植樹祭のための行幸だと記憶してゐます。

第四章「西の阪急、東の東急」では小林一三・五島慶太の私鉄界二大巨頭を論じながら、関東と関西の私鉄経営の相違などを炙り出してゐます。
第六章「都電が消えた日」では、都電廃止を提唱した『朝日新聞』の記事が紹介されてゐます。1959(昭和34)年といふ年代を考へると仕方が無いのかもしれませんが、あまりに短絡的な思考に慄然とするものであります。渋滞道路は、何車線増やさうと根本的な渋滞対策にはならない。道の中央に路面電車を一本通せばよろしい。ただし車を軌道敷から遮断しなくてはいけませんが。

第七章・第八章では新宿駅に於る学生などのデモ、上尾駅を舞台にした社会人たちによる暴動など、社会全体が不安定で、民衆が熱かつた時代の鉄道事情が明らかになります。当時の国鉄は超嫌はれ役だつたので、デモ学生たちには同情的な人が多かつたさうです。

鉄学を名乗つてゐますが、鉄道趣味そのものを対象にした本ではありません。
鉄道がいかに社会と関つてゐるのか、ここでは八つの見本として著者は提示したのでございます。その意味でやはり「鉄学概論」とは適切なネイミングと申せませう。
メイニア君たちは本書を教科書とし、対象から一歩下がつて、少し客観的に見つめてみてはいかがでせうか。
余計なお世話ですかな。

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