源氏川苦心の快楽書肆
古い本を探しては読みふけつてゐます。よければお付き合ひくださいな。
恋と革命
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恋と革命―評伝・太宰治
堤重久【著】
講談社(講談社現代新書)刊
1973(昭和48)年8月発行


著者は太宰治の弟子・友人としてその晩年を見届けました。弟は東宝俳優の堤康久さんで、特撮映画で活躍した人。なるほどさすが兄弟だけあつて、顔もよく似てゐます。

太宰治といふ作家はまことに不思議な存在であります。
資産家に生まれながら実父、次いで長兄に反抗する。成績優秀なのに放蕩を繰り返し、実家から仕送りを受ける身でありながら期待を裏切る。
普通なら世間知らずの甘つたれとして黙殺されるのが関の山でせう。しかしその作品は没後60年を超えてなほ愛読されてゐます。

堤重久さんは、太宰が生母から冷たい扱ひを受けてゐたことを重要視しました。母の愛情に飢ゑてゐたからこそ、その代替を叔母や子守に求め、彼女らも受け入れたと。そして道化(おどけ)の性向も、大家族の中でオズカスと呼ばれる目立たない自分が、何とか母親に注目されたいといふ、愛の渇きからきてゐるのだと。
他の人に言はれると、「まるで見て来たやうに言ひやがつて」と鼻白むのですが、堤重久さんの場合は「ははあ、さういふものですか」と納得するしかありません。

さらに、太宰と言へば自己憐憫とか弱さとかが強調されますが、それは太宰の作り出したポーズであるのださうです。精神的な強さ・男つぽさを併せ持つのですが、さういふ面は隠すのであります。さういへば「如是我聞」で、強いことは恥ぢるべきもので、もつと弱くなれと書いてゐた気がします。うろ覚えですが。
人間は恋と革命のために生れてきたのだ、と『斜陽』の人物に言はせ、その生き方を実践してきた太宰。
やはり強靭な精神力と意志を持つた男だつたのだな、といふ読後感が残るのであります。
力作。しかし絶版。残念。

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