源氏川苦心の快楽書肆
古い本を探しては読みふけつてゐます。よければお付き合ひくださいな。
震災と鉄道
震災と鉄道 (朝日新書)震災と鉄道 (朝日新書)
(2011/10/13)
原 武史

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震災と鉄道
原武史【著】
朝日新聞出版(朝日新書)刊
2011(平成23)年10月発行

本書の元になつたのは、ウェブマガジン上のインタビュー記事ださうです。しがたつて語り口調なので読みやすいのですが、内容はこの上なく重いのであります。
原武史さんは鉄道関係の著作がいくつかありますが、本職は政治思想史。専門外の気楽さからか、過去の鉄道関連著作には良い意味で「軽み」があります。
ところが本書『震災と鉄道』は違ひます。

一読しますと、原武史さんの怒りや焦り、どうしやうもない悲しみが伝はつてくるのであります。何だかやるせない感じと申しますか。
主にJR東日本に対する苦言が目立ちます。地元民鉄(例へば三陸鉄道)が復興へ向けて明確な目標と、それに必要な支援を要請してゐるのに対し、JR東は東北新幹線を早々と復旧した事で満足して、依然運休中のローカル線をどう復興させるのか、全く明らかにしません。まさか足手まとひのローカル線がこれで廃線に出来る、などと考へてはゐないでせうが。

また、こんな非常時にもリニア新幹線の建設計画を変更することなく邁進するJR東海にも言及します。
リニアの駅ひとつ作るのに地上駅なら350億円、地下駅なら2200億円かかるとされてゐます。一方JR東は、被災したローカル線をすべて元通りにするのに1000億強と表明してゐます。すると地下駅1駅の分で被災ローカル線は助かるといふ計算になりますが、お金をこちらへ回さうといふ話にはならないのであります。突き進め!リニアだ!といふ感じですかな。

私見では、東北新幹線を最優先に復旧させたりリニアの建設をすすめたりするのは、「復興」「躍進」が実に分かりやすい形で人民に伝はる、象徴的な意味合ひがあるのではないかと思ひます。
唐突な話ですが、これはウルトラセブンに登場した「ガッツ星人」を想起させます。
地球征服を狙ふガッツ星人は、セブンが普段モロボシダンといふ地球人に化けてゐることを突き止め、「ならばダンを殺せばいいではないか」といふ意見が出ます。しかし結論は「いや、セブンでなければ駄目だ」。
その理由を佐原健二のタケナカ参謀が述べます。「我々の心のより所であるセブンをその眼前で抹殺することによつて、地球人は容易に屈服を認めてしまふだらう」
JRの方針とガッツ星人の戦略は似てゐるやうに思ふのですが、違ひますかな。

原武史さんは言ふだけではなく、自分で出来る支援として、三陸鉄道の切符を60万円分購入したさうです。そして人に会ふたびにこれを渡し、支援の必要性を訴へたといふことです。
お金は、有る所には有るのです。それが効果的に使はれず、支援を待つ場所へは届かないのがもどかしい。そんな状況なのです。

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