源氏川苦心の快楽書肆
古い本を探しては読みふけつてゐます。よければお付き合ひくださいな。
文章読本
文章読本 (中公文庫)文章読本 (中公文庫)
(1995/11/18)
丸谷 才一

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文章読本
丸谷才一【著】
中央公論社(中公文庫)刊
1980(昭和55)年8月発行
1995(平成7)年11月改版


文化勲章を受けることになつた丸谷才一さん。
わたくしも若い頃は、勲章なんてまことにくだらぬものよと考へてゐましたが、いざ丸谷氏が受章しますと「別にいいぢやん」とつぶやく自分がゐます。
インタビューを受ける丸谷才一さんは、相変らずの大きな声で元気よく語つてゐました。歴史的仮名遣ひで書くと本が売れないつていふんだよ、なんて。

故井上ひさしさんに「掛け値なしの傑作」と言はしめた丸谷版『文章読本』であります。
これは名人芸の域で、読んでゐるうちにその内容にうつとりし、上手な文章を書きたいなんで心持はどこかへ行つてしまふほどです。
第二章の「名文を読め」と第三章の「ちよつと気取つて書け」(カッコイイ)で、おほむね文章作法の要諦が示されてゐるのではないでせうか。他の章は実に贅沢な文章論と申せませう。

ところで、いはゆる名文とは何か。本書では以下のごとく説明されてゐます。
「有名なのが名文か。さうではない。君が読んで感心すればそれが名文である。たとへどのやうに世評が高く、文学史で褒められてゐようと、教科書に載つてゐようと、君が詰らぬと思つたものは駄文にすぎない。逆に、誰ひとり褒めない文章、世間から忘れられてひつそり埋れてゐる文章でも、さらにまた、いま配達されたばかりの新聞の論説でも、君が敬服し陶酔すれば、それはたちまち名文となる。君自身の名文となる」
それには広範囲に渡る多読が条件となる旨を付け加へてゐます。
本書の刊行後、この部分を吉行淳之介さんに対談で突つ込まれてゐました。くだらぬ文章を名文と思ふ危険性に言及したと記憶してゐます。丸谷氏は押され気味でしたが、そのやりとりは面白かつた。

しかし少なくともわたくしにとつて、本書は「敬服し陶酔する」に十分な一冊と申せませう。

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