源氏川苦心の快楽書肆
古い本を探しては読みふけつてゐます。よければお付き合ひくださいな。
南太平洋ひるね旅
南太平洋ひるね旅南太平洋ひるね旅
(1973/04/06)
北 杜夫

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南太平洋ひるね旅
北杜夫【著】
新潮社(新潮文庫)刊
1973(昭和48)年4月発行


先日亡くなりました北杜夫さん。『怪盗ジバコ』を取り上げて間もありませんが、改めて北作品。
あまり語られることは少ないが一読に値するもの、といふことで、本書を選んでみました。ところが後で、本書はすでに絶版であることが判明。しまつたと思ひましたがもう遅い。まあいいでせう。

『南太平洋ひるね旅』は、『どくとるマンボウ航海記』に続く二冊目の紀行作品であります。主な行程はハワイ⇒タヒチ⇒フィジー⇒ニューカレドニア⇒サモア。1961(昭和36)年から翌年にかけての訪問ださうです。
もう50年も前の紀行文なのですが、北杜夫氏の作品としてその価値は高まりこそすれ、減じることはありますまい。

訪問当時には、すでに侵略者側たる西の先進国にかなり染まつてゐる様子が描写されてゐますが、それを堕落だとか言つて嘆いたり非難するのは筋違ひだと著者は述べます。「オッパイを丸出しにした女がほほえみかけ、裸体の土人が椰子の木かげで踊っていなければ、どうも文明人は失望したがる。しかし、すべては自分たちがしたことなのだ」(本文より)

独立の気運が高まつても、財政的に余裕がないから、結局植民地のままであつた方が良いとか、独立しても発言権がないとか、あまり喜ばしくない状態になつてしまつたといふことでせう。昔は自分たちだけの世界で、厳然たる秩序と倫理があつたのが、中途半端に「先進国」の論理がはびこるやうになり、新たな問題も増えてゐると推察されます。
全体を軽いユウモワで包む本作ですが、さういふ面を嫌味なく指摘する箇所もあります。

いつ、どこで読んでも面白い作品と申せませう。しかしこのユウモワが現在の人に受け入れられるか。味音痴が玄妙な味覚を「物足りない味」と感じてしまふやうに(わたくしもさうですが)、「笑ひ」といへば意味もなくはしやぎ騒ぐ昨今、若干の不安はあります。
多分杞憂でせうが。

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