源氏川苦心の快楽書肆
古い本を探しては読みふけつてゐます。よければお付き合ひくださいな。
夏の花・心願の国
夏の花・心願の国 (新潮文庫)夏の花・心願の国 (新潮文庫)
(1973/08/01)
原 民喜

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夏の花・心願の国
原民喜【著】
新潮社(新潮文庫)刊
1973(昭和48)年7月発行
2000(平成12)年4月改版


原民喜は1951(昭和26)年に、鉄道自殺を遂げます。鉄道自殺は一番迷惑な死に方と申せませう。絶対にいけません。
で、今年は没後60年であることに今さら気付き『夏の花・心願の国』を取り上げてみました。
大江健三郎氏編集の本書は、戦前(広島で被爆する前)の作品はすべて省かれてゐます。それにより、本書の方向性も一層はつきりしたのであります。流線型。

「Ⅰ」~「Ⅲ」の三つのセクションに分割されてゐまして、「Ⅰ」に収められたのは妻の闘病、そして死までを描く作品群。「Ⅱ」は、いはゆる「夏の花」三部作。そして「Ⅲ」は作者の忍耐と願ひが痛々しい最終期の作品たち。編集の妙であります。

被爆を描いた作品は他にもありますが、これほど作為を感じずに感動を呼ぶものを知りません。電車の中で読まうと名鉄豊田市駅から乗込み、夢中になつて憑かれるやうに読みふけりました。電車はそのまま地下鉄鶴舞線に乗入れ、上前津駅で乗り換える予定だつたのですが、はつと気がついたら既に大須観音駅に到達してゐました。こんな経験は初めてであります。

作者はとにかく耐へてゐます。「鎮魂歌」の切なる祈りには心揺さぶられずにゐられないでせう。そして公開遺書の様相を呈する「心願の国」...実は精神的に強い人であつたと思はれます。被爆を体験した作家としての義務感が、創作の支へになつてゐたのでせうか。

本作は決して古典の棚に収められるものではなく、今でも我々の世界に問ひを発してゐるやうです。
一読して震へが来ますよ。

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