源氏川苦心の快楽書肆
古い本を探しては読みふけつてゐます。よければお付き合ひくださいな。
心臓抜き
心臓抜き (ハヤカワepi文庫)心臓抜き (ハヤカワepi文庫)
(2001/05)
ボリス ヴィアン

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心臓抜き
ボリス・ヴィアン【著】
滝田文彦【訳】
早川書房刊
2001(平成13)年5月発行

ボリス・ヴィアン最後の長篇小説であります。
以前の作品にも増して厭世観漂ふ世界。しかし読後感は重たくない。不思議であります。強いて言へば昔のエゲツナイ新東宝映画を観終つた感じですかな。

一応ジャックモールといふ精神科医が主人公の形をとつてゐますが、とても読者が感情移入できる雰囲気ではありません。尚ジャックモールのモール(仏語mort)は死を連想させて不吉であります。
ジャックモールは精神分析の実験が目的で、辺鄙な村までやつて来ます。しかし時空のをかしいこの村では、いたづらに自分の精神を破壊させるのみでありました。

物語らしい筋はあるにはありますが、本作ではその意味は小さいようです。人を喰つた会話にニヤニヤしながら、知らぬ間に読者もジャックモール同様、混迷の世界に引き込まれてゆくのです。

また、タイトルの『心臓抜き』とは、そもそも何か。ヴィアンの読者ならば、『日々の泡』(『うたかたの日々』の邦題もあり)の中で、ジャン・ソル・パルトル(ジャン・ポール・サルトルのもぢり)を殺害する道具として記憶してゐることでせう。
なので本書を読みながら「いつ心臓抜きが登場して、誰に対して使はれるのだらう」と思つてゐると、結局最後まで現れないのでした。どういふこと?
この小説自体が読者の心臓を抜く毒なのだよ、といふことでせうか。ま、詮索しても意味がないのがボリス・ヴィアンですがね。

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