源氏川苦心の快楽書肆
古い本を探しては読みふけつてゐます。よければお付き合ひくださいな。
秘録 陸軍中野学校
秘録・陸軍中野学校 (新潮文庫)秘録・陸軍中野学校 (新潮文庫)
(2003/07/30)
畠山 清行

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秘録 陸軍中野学校
畠山清行【著】
保阪正康【編】
新潮社(新潮文庫)刊
2003(平成15)年7月発行


かつて日活で制作された『間諜中野学校 国籍のない男たち』なる映画を観たので、かかる書物を手に取つてみました。
ちなみにこの映画は1964(昭和39)年の公開なので、市川雷蔵で有名な『陸軍中野学校』シリーズよりも早いことになります。 

さて『秘録 陸軍中野学校』は、畠山清行氏が正編を1965(昭和40)年に、続編を翌1966(昭和41)年に発表した労作力作をもとに、保阪正康氏が編集を加へた一冊であります。
元の版は、正続併せて60編のエピソオドからなり、それぞれが独立した内容となつてゐたのを、保阪氏が28編を厳選しテエマ別に再編集したものです。半数以上は割愛された訳ですが、残つた28編だけでも700頁に及ぶヴォリュームがあり読み応へがございます。

従前、中野学校に関する情報は限定的にしか解らなかつたと言ひます。卒業生たちも黙して語らずの姿勢を貫いてきた証左と申せませう。
何しろ軍の機密を扱ふ秘中の秘の存在。スパイ天国を返上するべく誕生した中野学校だからこそ情報の漏洩は少なかつたことでせう。

本書によりますと、当時の日本の諜報網は案外に進んでゐたやうです。
諜報先進国である英国や独国には及ばぬものの、「新興国」米国を上回る技術を所持してゐたさうです。これは意外な話でした。

選りすぐりの優秀なメムバアを召集し、自由闊達な校風の中で一年間(実際はそれよりも早く卒業させられたやうですが)みつちり叩き込まれたといふことです。

俗世間では一般会社員に化け、親から貰つた名前も捨て、祖国のために命を預けた若者たち。卒業後は各方面に工作員として派遣され、「中野卒業生」は期待通りの成果を挙げたのであります。
むろん彼らの仕事の性格上、誰にもその成果は見えず、従つて素晴らしい功績を挙げても賞賛する人もない、しかも失敗すれば死が待つといふ切ない任務なのでした。

著者は当時はまだ少なかつた文献に徹底的にあたり、関係者たちの生の声を集め、中野学校の全貌に迫らんとしたのであります。吉田茂と東輝次氏との項では、真の愛国者とは誰だつたのかを問ふ象徴的なエピソオドが開陳されてゐます。これを読んで吉田茂の印象が少し変りました。

本書の刊行後、陸軍中野学校に関する書物は続々と登場しますが、現在も褪せることのない存在感を示す一冊と申せませう。

久々の更新で若干疲労しましたので、これから寝ます。晩安大家。

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