源氏川苦心の快楽書肆
古い本を探しては読みふけつてゐます。よければお付き合ひくださいな。
ぶ男に生まれて
ぶ男に生まれて (集英社文庫)ぶ男に生まれて (集英社文庫)
(2004/11)
徳大寺 有恒

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ぶ男に生まれて
徳大寺有恒【著】
集英社(集英社文庫)刊
2004(平成16)年11月発行




タイトルを見て、「ほほう、源氏川苦心め、自分の事を語りだすのか?」と早合点する人がゐるかも知れません。
しかし、それは違ひます。ま、確かにわたくしはぶ男のカテゴリーに含まれる人間でせうが、わざわざ自らそれを強調するやうな趣味は持ち合はせてゐないのであります。

これは、先達て亡くなつた徳大寺有恒氏の著書のタイトルであります。
徳大寺氏といへば、自動車評論で他の追随を許さぬ地位を築きあげた人。しかし残念ながらわたくしはクルマ趣味がないので、もつぱら徳大寺氏の人となりについてが分かる本はないかと探したら、この『ぶ男に生まれて』がありました。

徳大寺氏がその半生を語つた自伝本かな、と思ひ読み始めると、とにかくコンプレックスの話ばかり出てきます。
単に容姿のことのみならず、出身地や学歴、さらには仕事上のコンプレックスなど、彼はあらゆる面で劣等感を抱いてゐたらしい。
普通ならそこでイジケてしまひ、悶々と日々を過ごすだけの人間になりかねません。犯罪に走る輩もゐるかもしれないのです。
しかし徳大寺氏はそのコンプレックスを力に変へました。もつとも本人によると、女性にモテたいといふ強い願望が原動力のやうです。まあ男なら誰でも(特に若い頃は)女性にはモテたいと考へますが、この人の場合はちと尋常ではない。その思考がコンプレックスとない交ぜになり、驚異の行動力へと向かふのであります。
もし美男子であつたらチャンスを掴むこともなく、『間違いだらけのクルマ選び』で成功することもなかつたであらうと言ひます。ポジチヴであります。

「好きなことは記録せずに記憶する」「コンプレックスのない人間は色気がない」「男に不可欠なのはユーモア精神」「嘘のない恋愛はない」「コンプレックスが武器になることだってある」...章のタイトルを並べるだけで、悩める若者たちへのアドヴァイスになつてゐます。本人は「僕は努力したことがない」と述べてゐますが、それは明らかに嘘だらうな。ただ、人並みの苦労を苦労とも思はぬ人だから、別段努力したといふ自覚がないのでせう。余人には真似の出来ぬところです。

徳大寺さんは自らを繰り返し「ぶ男」と呼びますが、実に味のある良い顔をしてゐると思ひます。同じ「ぶ男」でも、のんべんだらりと生きてゐるだけでは、かういふ余裕のある顔にはならんでせうな。
クルマに興味の無い人も愉しめる一冊と申せませう。特に若い男性諸君、一読すれば大概の悩みは馬鹿馬鹿しくなること請け合ひですよ。

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