源氏川苦心の快楽書肆
古い本を探しては読みふけつてゐます。よければお付き合ひくださいな。
大相撲ちょっといい話

iihanasi.jpeg  大相撲ちょっといい話 (文春文庫)

大相撲ちょっといい話
小坂秀二【著】
文藝春秋(文春文庫)刊
1995(平成7)年1月発行



一年納めの九州場所では、横綱白鵬関が32回目の優勝を飾り、大鵬の記録にあつさり並んでしまひました。他の力士たちの体たらくからして、記録を更新するのは時間の問題と申せませう。まだ若いので、40回近くまでその数を伸ばすのではないでせうか。
これは大層なことですよ。王貞治氏の本塁打記録55本をバレンティン選手が60本といふ驚異の数字で更新したけれど、これは単年の記録であります。相撲でいへばいはば年間最多勝でせうか。個人が特定の一年間を頑張れば、記録更新は可能なもの。
しかし優勝記録は長い年月をかけた積重ねの末、やうやく達成するものであります。即ち野球でいへば王貞治氏の生涯本塁打数868本を抜くとか、金田正一氏の通産400勝を上回るとかのレベルでせう。もつと大騒ぎしてもいいくらゐだと勘考するものでございます。

さてさうなりますと、物好きどもが、果たして白鵬は歴史上の力士と比較してどうなのか?を論じたくなるものです。彼の場合、ライバル不在といふ点を指摘して、かなり数字を割り引いて評価されることが多いのが気の毒であります。中には、柏戸利助(江戸文政時代の大関。戦後の柏戸剛ぢやないよ)クラスであらうなどと主張する人もゐたりして(柏戸利助本人は無論強豪力士の一人なのですが)、それは過小評価ぢやないかと思ひます。
長い大相撲史上、いはゆる「十大強豪力士」なるものが存在しますが、個人的意見としては、白鵬さんは彼らと伍する存在ではないかと...オット物を投げないでください、分かりましたもう申しません。

ではいい加減に『大相撲ちょっといい話』の話を。著者の小坂秀二氏は、その昔TBSの相撲放送で有名だつた名アナウンサー。ん?TBSで相撲放送?と訝しがつたあなた、鋭い。現在大相撲中継はNHKのみですが、以前は民放でもやつてゐたのです。
小坂氏は双葉山時代から、自らの目で土俵を見て取材してゐます。したがつて伝聞記述はほとんどなく、実際に体験したエピソオドばかりなので、他の人には書けない内容となつてゐるのです。

横綱大関クラスだと資料も多いのですが、関脇以下で土俵を去つた力士については、小坂氏のやうな人が語らないと後世に残らない話も多い。
たとへば肥州山。起重機と呼ばれた吊りの名人。あの明武谷よりも前の時代ですよ。後に相撲解説で有名になる玉ノ海は怪力で鳴らした人で、一度右を掴めば誰も切れない。或は肥州山なら切れるのではないか...後に対戦が実現し、玉ノ海はやはり右を取ります。肥州山は懸命に切らうとしますが、結局切れませんでした。「肥州山でもダメだつたか」と思つたその時、玉ノ海の右手首の皮が剥けてゐた...

こんな話がわたくしは好きなのであります。章立ては時代順に、「戦前、戦中の力士たち」「不動の人・双葉山」「栃錦と若乃花」「戦後の力士たち」「大鵬と柏戸」「平成のスターたち」となりますが、やはり古い時代ほど興味深い話が多いですな。

...やはり相撲は面白い喃。ぶつぶつ文句を言ひながら、今後も相撲を見続けるのだらうな。
ではご無礼します。

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