源氏川苦心の快楽書肆
古い本を探しては読みふけつてゐます。よければお付き合ひくださいな。
少年たちの終わらない夜
少年たちの終わらない夜 (河出文庫―BUNGEI Collection)少年たちの終わらない夜 (河出文庫―BUNGEI Collection)
(1993/07)
鷺沢 萠

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少年たちの終わらない夜
鷺沢萠【著】
河出書房新社(河出文庫)刊
1993(平成5)年7月発行



鷺沢萠さんがこの世を去つて早くも十年が経過しました。同世代の気鋭作家といふことで、その作品には注目してゐただけに、訃報には驚いた記憶があります。
『少年たちの終わらない夜』は、鷺沢さん最初期の作品集。即ちまだ十代の頃です。
改めて読むと、当時はこんな文章書いてたんだな、と後年の作品との相違に軽い驚きを禁じ得ないのであります。

表題作ほか四篇が収録されてゐます。いづれの作品にも、二十歳を目前にしたハイティーンの不安や絶望、焦燥感といつたものが蔓延してゐるのです。

少年たちの終わらない夜」の川野真規くんは高校三年生。バスケの引退試合で、勝ちたいがあまりにレフェリーの目を盗んでインチキをしてしまふ。そのお陰で勝利しますが、のちに一人でゐるところを試合相手のメンバーに見つかり、報復でボコボコにされてしまふのです。彼の頭には、いかに仕返ししてやるかといふ考へしかなかつた...

誰かアイダを探して」の「僕」とアイダは十九歳。二人は偶然知り合ひ毎日逢ふやうになる。しかしアイダは「二十歳になったら...」と云ひかけたままどこかへ消えてしまふ。「そうだね、アイダ。二十歳になったら、何をやってもフツウのことになっちゃうよ」と「僕」はつぶやき、「でも怖がることはなかったんだよ。君は自分を気にしすぎたんだ」とアイダに伝へたい。アイダはどこにゐるのだ?

ユーロビートじゃ踊れない」は、タイトルがちよつと...といふ感じですね。ところでフーズボールなる遊戯の名を初めて目にしたのが本作であります。

ティーンエイジ・サマー」。「僕」・梶井・大野・良・浩次・そしてリンは小中高12年間、同じ学校で過ごした仲間であります。大学進学した者、海外留学した者、リンのやうになぜか進学せずアルバイトする者など、高校卒業後は各方面に散つたのです。そんな彼らが、十代最後の夏を過ごさうと集まつたが...

とまあ、過剰なほど十代に拘泥した作品たちです。正直のところ、好みかと聞かれると返答に窮するのでありますが、恐らく登場人物たちも、「終わらない夜」は自分たちが作り出した幻想であることに気付いてゐるのでせう。もがき傷付いても正直に生きたい、作者自身の十代への決別とも云へるのかも知れませんね。

それぢやあ、また。

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