源氏川苦心の快楽書肆
古い本を探しては読みふけつてゐます。よければお付き合ひくださいな。
寝台特急「北斗星」殺人事件
寝台特急「北斗星」殺人事件 (講談社文庫)寝台特急「北斗星」殺人事件 (講談社文庫)
(2005/05/13)
西村 京太郎

商品詳細を見る

寝台特急「北斗星」殺人事件

西村京太郎【著】
講談社(講談社文庫)刊
2005(平成17)年5月発行


1988(昭和63)年、念願の青函トンネル開通とともに誕生した寝台特急「北斗星」。前年に国鉄が消滅したばかりの年で、新生JRを印象付ける豪華列車として話題になりました。
一人用個室ロイヤル、二人用個室ツインデラックスなど、過去に無い居住性を誇る客室が憧れの的となり、たちまちチケット入手難の人気列車になつたのであります。

その「北斗星」にも、遂に来るときが来たやうです。来年3月のダイヤ改正でいよいよ姿を消すとの報道は、各方面で話題となつてゐます。「トワイライト」同様、乗車率が下つての撤退ではないのがまた口惜しい。車両の老朽化とか北海道新幹線の工事の影響とか述べてゐますが、それは後付の理由でありませう。JR各社の思惑は別のところにある。
削減される一方の夜行列車を見ると、かつての路面電車を連想します。マスコミのネガティブキャンペーンをも利用し、完全に時代遅れの代物扱ひして世論を形作つたのであります。

同様に、現在のマスコミもブルトレを始めとする夜行列車の廃止を惜別するふりをしながら、「この高速鉄道時代にあつて、その役割を終へた」などと過去の遺物扱ひするのであります。
さうぢやない。夜行列車が不要になる時代は、恐らくこれからも来ない。必要とされる列車を走らせないだけの話であります。懐古趣味で言ふのではありません。その便利さ、快適さを知らない人が多すぎるために、皆気付かないのであります。

などとひとり力瘤を入れても詮無いので、西村京太郎氏の話を。彼は、自らの作品がブレイクしたのは「ブルトレのおかげ」と述懐します。そのブルトレの集大成となり、結果的に最後のブルトレとなつた「北斗星」を題材にしたミステリが『寝台特急「北斗星」殺人事件』であります。「寝台特急「北斗星」」の部分を「ロイヤルトレイン」と読ませるやうです。ふふん。

「北斗星」を爆破するとの予告電話が入ります。嘘ではない証拠として、4号車の個室でまづ爆発が! 犯人の要求は一億円。グループの一味はあつさり逮捕されますが、こいつが仲間に中止の連絡をしない限り爆破は予告通り実行されるといふが、自衛隊の専門家が車内をくまなく探しても爆発物は発見できなかつたことから、大勢は「苦し紛れの嘘」と見る。しかし我らが十津川警部だけは違つた...

十津川警部シリーズの中でも秀逸な作品の部類に入ると申せませう。万人向けの、厭味のない文章であります。
ブルトレはもうミステリの中でしか出逢へぬのかと思ふと、一層いとほしいですな。
かういふ話題ですと、あまり冷静でゐられないわたくし。ご無礼しました。

スポンサーサイト
コメント
コメント
コメントの投稿
URL:
本文:
パスワード:
非公開コメント: 管理者にだけ表示を許可する
 
トラックバック
トラックバック URL
http://genjigawa.blog.fc2.com/tb.php/507-73d32697
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
トラックバック