源氏川苦心の快楽書肆
古い本を探しては読みふけつてゐます。よければお付き合ひくださいな。
傷だらけの店長
傷だらけの店長: 街の本屋24時 (新潮文庫)傷だらけの店長: 街の本屋24時 (新潮文庫)
(2013/08/28)
伊達 雅彦

商品詳細を見る

傷だらけの店長―街の本屋24時

伊達雅彦【著】
新潮社(新潮文庫)刊
2013(平成25)年8月発行


著者は書店チェーンで、店長を務めた人ださうです。いかに本屋の勤務が過酷であるかを述べた一冊。まあ著者の狙ひは本当は違ふのでせうが、結果的に「俺がどんなに苦労したか、解つてくれよ。いや解らなくてもいい。とにかく吐き出させてくれい」みたいな内容になつてゐます。
わたくしも、複数の書店チェーンで店長を長年やつてましたので、その苦悩ぶりは実によく分かるのであります。
少ない休日に長時間労働、恒常的なサービス残業、能力を超える絶望的な作業量、クレーマーや万引対策、社内営業を強ひられる「本部」対応...とてもぢやないが、本と人が好きでないと勤まらないのであります。

しかし伊達雅彦さんはまだいい。どうやら書店物販専業のやうで、夜10時には閉店できるやうですから。本人もいふやうに、閉店後に自分のやりたい仕事が出来ます。別段過酷さを競ふ訳ではありませんが、わたくしの勤務した店は書籍雑誌のみならず、CDやDVDのレンタルや販売、中古ゲーム、古本、文房具など取扱部門が多く、すべてを店長が面倒を見なくてはなりません(むろんそれぞれに担当者はゐますが、結果責任は当然店長が負ふ)。
いきほひ営業時間は長くなり、早くても夜の2時、これにネットカフェなんかが併設されてゐると、24時間営業が当り前なのであります。例へ休日でも緊急時には呼び出しがかかり、電話での指示で済まないこともあるので、実際に出動することもあります。休日だからといつてうつかり酒も呑めないのであります。たまたま友人と酒を呑んでゐた時に呼び出され、仕方なくタクシーで店に向つたことも。

ああ、いかんいかん。どうしても後ろ向きの話ばかりになります。『傷だらけの店長』に救ひはないのか?
著者は常に理想を求め、志が高いからこそ現状との乖離に苛立ち、もがくのであります。すこぶる優秀な人材だと推測されるのですが、チェーンストアでは求められるスキルが違ふのでせう。

リアル書店は今後、総合大書店と一部のチェーンストアに収斂されてゆくと思はれます。実際、我家の近所にある大型書店は、平日の昼間から決して狭くない駐車場は満杯、道路が渋滞するほどの盛況ぶり。近所の本屋さんが次々と閉店するから、一人勝ち状態なのです。ますます、本好きの理想とする本屋は遠のくことでせう。

「本屋になりたい」といふ人がゐたら、わたくしも著者同様、勧めません。本が好きならなほさらであります。それでも諦めない人には、本書を読んでもらひませう。

スポンサーサイト
コメント
コメント
コメントの投稿
URL:
本文:
パスワード:
非公開コメント: 管理者にだけ表示を許可する
 
トラックバック
トラックバック URL
http://genjigawa.blog.fc2.com/tb.php/511-396165c5
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
トラックバック