源氏川苦心の快楽書肆
古い本を探しては読みふけつてゐます。よければお付き合ひくださいな。
東海道新幹線 運転席へようこそ
東海道新幹線 運転席へようこそ (新潮文庫)東海道新幹線 運転席へようこそ (新潮文庫)
(2013/12/24)
にわ あつし

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東海道新幹線 運転席へようこそ

にわあつし【著】
新潮社(新潮文庫)刊
2013(平成25)年12月発行


新幹線の運転席では何が行はれてゐるのか、どのやうな勤務体系なのか、いかなるメムバアで構成されるのか、どんな会話がなされてゐるのか、わたくしども部外者が普段は知り得ないあれこれを、かつて東海道新幹線の運転士だつた著者が教へてくれる一冊であります。

まづ「新幹線の基礎知識」で、新幹線の歴史、しくみなどをコムパクトに講義してくれます。ご親切にも、興味がなければ飛ばしても良いと著者は述べますが、飛ばすのはもつたいない。短いしすぐ読めます。テツの人はご随意に。わたくしはテツではないのでしつかり目を通します。

その後いよいよ実際に運転する様子がドキュメント風に綴られるのでありますが、二部構成になつてゐます。
第1部は、「0系新幹線でゆく、東京-新大阪(昭和53年春の某日)」、第2部が「N700Aでゆく、新大阪-東京(平成25年春の某日)」であります。即ち、往路は最古参、復路は最新鋭の新幹線電車で我我読者を案内してくれるといふ訳ですな。

0系時代は、2名の乗務員が交代で運転。ゆとりがあります。更に便乗の乗務員もゐたりして、会話も弾むやうです。やつぱり人間ですからね、緊迫した精神状態を3時間10分も持続させるのは無理がありますからな。ワゴンサービスの女の子もやつてきて、中中賑やかであります。

読者のために、乗務員たちの若干不自然な会話の中で、色色なエピソオドを教へてくれます。子供たちへのサアビスで警笛を鳴らしたりとか、架線に凧が引つ掛かりやすいとか、マグロ(轢死体)への対応だとか、虫の死骸で前方の視界が悪くなるとか、花火大会をゆつくり見るためにその前後で時間をかせぐ運転士の話とか、直接運転士に苦情をぶつける乗客だとか、満員状態だとブレーキの効きが甘くなるとか、新幹線の線路を最初に走つたのは阪急電車であるとか、それはまあさまざまな話題を開陳するのです。

中でも事故、或は事故未遂に関する話はゾッとします。開業以来死亡事故を発生させてゐないなどと(正しくは三島駅で死亡事故が発生してゐる)喧伝してゐますが、一歩間違へれば大惨事...といふヒヤリハットは数多くあるのでした。

N700Aによる復路は、すでに著者が退社した後なので、現役運転士(望月氏)の視点から見た話になつてゐます。合理化による人員削減はこの世界にも及び、一人乗務は厳しさうです。しかし最新鋭のハイテク新幹線は、運転士も気分が良ささうであります。
そして読者も楽しい時間を共有でき、満足して本書を閉ぢるのでした。

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