源氏川苦心の快楽書肆
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朽ちていった命
朽ちていった命―被曝治療83<br />日間の記録 (新潮文庫)朽ちていった命―被曝治療83日間の記録 (新潮文庫)
(2006/09)
NHK「東海村臨界事故」取材班

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朽ちていった命―被曝治療83日間の記録―

NHK「東海村臨界事故」取材班【著】
新潮社(新潮文庫)刊
2006(平成18)年9月発行


茨城県東海村の核燃料加工施設で起きた臨界事故。憶えてゐますか。恥づかしながら、わたくしはこの事故について、ほとんど忘却してゐました。本書を手に取つた偶然に感謝するものであります。

自らが行ふ作業に関して、その危険性を知らされぬまま、無防備な体制で仕事をさせられてゐた作業員。
核燃料サイクル開発機構の高速実験炉にて使用するためのウラン溶液を、別の容器に移し替へる作業をしてゐた大内久氏と篠原理人氏の2名が、臨界事故に遭遇し被曝したのでした。

本書は、大内氏が被曝してから、83日後に亡くなるまでを詳細に記録したNHKのドキュメンタリー番組を書籍化したもの。2001(平成13)年に放映された番組ですが、現在の政府及びNHK会長ならば許可しない内容ではないかと想像してしまひます。ま、それは余計なことですな。

大内氏の治療を買つて出たのは、東京大学医学部教授の前川和彦氏。「負け戦ですよ」と周囲が異を唱へても、強い意志で治療に挑みます。
しかし何といつても、過去に例のない事例です。医療チームにとつても初めての経験なので,前川氏の言葉の通り「海図のない航海」をすすめるしかありませんでした。

入院当初はまだ明るい表情で冗談も飛ばしてゐた大内氏。それが病状が進むにつれ、苦痛を訴へ、口数も減り、遂には言葉を発することも出来ず、それどころか喜怒哀楽の意思表示さへ出来なくなるのです。その変化を目の当たりにする看護師たちも苦悩します。

皮膚を失ひ、細胞は破壊され、どう見ても回復は望めぬ事態に、医療チームも迷ひます。この治療は、大内氏のためになつてゐるのだらうか。いたづらに彼を苦しめるだけではないのか―
救ひは、大内氏の家族であつたといひます。いかなる状況でも現状から目を逸らさず直視し、なほかつ最後まで希望を失はぬ姿勢を貫いたさうです。本当の家族愛とはかういふものなのだらうと教へてくれる、素晴らしい一家だと思ひます。

そして83日目、つひに大内氏は力尽きます。35歳の若さでした。「もうこれで苦しむことはないね」と声をかける看護師。矛盾を承知で、もうがんばる必要はない、良かつたねと。

「あとがき」によると、若い医者や看護師の卵でさへ、「東海村臨界事故」の事を「知らない」「何となく記憶にあるが、詳しく覚えてない」状態ださうです。一般の人ならなほさらでせう。珍しく真面目に、多くの人に読んでいただきたいと感じた次第です。
この国の国民は、今後も原子力とともに歩むことを(選挙で)選択した訳ですから、放射性被曝の実態も承知の上なのでせう。

デハ就寝します。今日ほど普通の生活が有難いと感じたことはありません...

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