源氏川苦心の快楽書肆
古い本を探しては読みふけつてゐます。よければお付き合ひくださいな。
日本語はどう変わるか
日本語はどう変わるか――語彙と文字 (岩波新書)日本語はどう変わるか――語彙と文字 (岩波新書)
(1981/01/20)
樺島 忠夫

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日本語はどう変わるか―語彙と文字

樺島忠夫【著】
岩波書店(岩波新書)刊
1981(昭和56)年1月発行


古い本ですがね、これがまことに面白いのであります。1981年1月といへば、当時の関脇千代の富士が第一人者の横綱北の湖を破つて初優勝、その年のうちに大関・横綱と一気に駆け上がり、「ウルフフィーバー」などと呼ばれて社会現象になつてゐた頃。本書には何の関係もないが、それだけ昔の本であることを言ひたかつただけです。

タイトル通り、将来の日本語がどうなるかを、サブタイトルにあるやうに「語彙と文字」の面から考察した一冊であります。
冒頭に「日本語の乱れ」の議論があります。これはたぶん、古くて新しい問題で、おそらく「近頃の若い者は」と同じくらゐ昔から嘆かれてゐたのではないでせうか。
何をもつて「乱れ」とするかは個人差がありますが、外来語が跋扈してゐるといふ点では多くの人が首肯するところではないかと。

著者の研究成果によりますと、基本的な和語は千年経つても大きな変化はない。少数の和語が日本語を支へてゐるといふ点では、日本語は外来語に占領されてゐるとは言へないさうです。
しかし外来語は欧米発のカタカナ語だけではありません。現在違和感なく使用してゐる漢語も、中国からの外来語と申せませう。これらを勘案しますと、やはり和語のみで文章を作るのは難しい。むりやり和語のみで作成すると、実に間延びした、ちやうど井上ひさしさんが言葉遊びをするやうな文章になり、笑ひを誘ふには格好のものですが、例へばビジネス文書には不向きな文章になるやうです。

現在(本書執筆当時のことですが、平成27年現在でも大きな相違はないやうです)日本語を表現する文字として、使用頻度順に列挙すれば「平仮名・漢字・片仮名・(ローマ字)交じり」となりますが、今後は漢語が外来語化したり、かな書きされる傾向が強まると著者は見てゐます。
そこで変化の第一段階「平仮名・片仮名・漢字・(ローマ字)交じり」、第二段階「平仮名・片仮名・ローマ字・漢字交じり」、第三段階「平仮名・ローマ字・片仮名・漢字交じり」、そして第四段階ではつひに片仮名がローマ字に食はれ、「平仮名・ローマ字・漢字交じり」と予想できない訳でもないと述べてゐます。

ただ現在の我我は、当時は普及してゐなかつた日本語ワードプロセッサーを当り前のやうに駆使してゐます。これは樺島教授も言及してをりませんが、これによつて漢字の簡略化や廃止論、ローマ字国語化論などは急速に力を失つてゆくのでした。したがつて今後、ローマ字が日本語を侵食するといふのは想像しにくいですね。

なるべく私見を挟まずに語彙と文字の変化を論ずる樺島教授。しかし文中で本多勝一氏の主張を紹介したり、中桐雅夫氏の詩を引用したりと、何となく著者の立ち位置がわかるのであります。知的興奮に溢れた一冊と申せませう。

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