源氏川苦心の快楽書肆
古い本を探しては読みふけつてゐます。よければお付き合ひくださいな。
大アンケートによる日本映画ベスト150
大アンケートによる日本映画ベスト150 (文春文庫―ビジュアル版)
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大アンケートによる日本映画ベスト150

文藝春秋【編】
文藝春秋(文春文庫ビジュアル版)刊
1989(平成元)年6月発行



本書は1989(平成元)年に発売されてゐます。といふことは、平成の作品は登場しません。しかし、それで良いのです。かういふ、ベスト○○といつたたぐひのものは、最近のものは除外した方が何かと角が立たない。「昭和の邦画ベスト150」と読み替へれば、現在でも十分通用する、まことに充実した一冊なのであります。

アンケートの回答を寄せたのは、映画好きの著名人372名。それぞれが皆、お気に入りのベスト10を挙げてゐます。中にはそれほど詳しくなささうな人もゐますが。また、古い人たちの傾向として、
 ①最近の邦画は観ないからわからない。
 ②劇場でリアルタイムで観たものに限る。後にヴィデオで観たものは除外。
といつた、頑固かつ謹厳実直な姿勢を貫く人が多いやうです。そんな鯱張らずに、もつと気楽にいかうよ。

作品篇・監督篇・女優篇・男優篇でそれぞれランキングを発表してをります。第一位を順番に述べると、「七人の侍」「黒澤明」「原節子」「阪東妻三郎」となるさうです。作品と監督は、2015(平成27)年現在でも、結果に相違はないやうな気がします。一方、原節子やバンツマはもう知らない人も殖えてゐるのではないでせうか。

読み物も粒揃ひであります。まづ巻頭に赤瀬川隼・長部日出雄・藤子不二雄Ⓐの三名による座談会。皆さん本当に詳しい。
そして「ジャンル別マイベスト」。戦争映画とかヤクザ映画とか喜劇映画とか、14のジャンルを設定し、それぞれに思ひ入れのあるであらう人が執筆してゐます。しかし、怪獣映画のジャンルでは、人選を間違へたかも知れません。

圧巻は、井上ひさし氏による「たったひとりで、ベスト100選出に挑戦する!」
井上氏は、アンケートに「10本だけでは酷だ。せめて100本選びたい」と記入したところ、何と編集部から「どうぞ100本選んでください」と返答があつたさうです。やるな。
井上氏はその刹那は小躍りして喜びましたが、実際には、それから100本選び出すまでの四か月間は「地獄だった」と言ひます。ベスト100に入れたい映画が250本以上もある(!)といふことで苦しんだのです。彼の結論は、結局大人しくベスト10だけ選び、あれも入れたかつた、これも選びたかつたとボヤくのが唯一正しい態度だと。

で、井上版ランキングでも1位は「七人の侍」。1位から次点の101位まで、すべての作品にコメントを付けてゐます。面白いのは、比較的上位作品は簡単なコメントに終始してゐたのが、最後の方になるほど(つまり下位作品ほど)、コメントに力が入り、長くなつてゆくところであります。畢竟、何位だらうが、映画好きにとつては構はない、といふことでせうか。

最後に、選出されたベスト150のうち、上位10点を紹介します。
①七人の侍②東京物語③生きる④羅生門⑤浮雲⑥飢餓海峡⑦二十四の瞳⑧無法松の一生(バンツマ版)⑨幕末太陽伝⑩人情紙風船。ちなみに、わたくしのベスト10と被るのは6位と8位だけであります。
はあ、わたくしの話はどうでもいいですかな。これはご無礼しました...

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