源氏川苦心の快楽書肆
古い本を探しては読みふけつてゐます。よければお付き合ひくださいな。
鉄道不思議読本
鉄道不思議読本 (朝日文庫)鉄道不思議読本 (朝日文庫)
(2008/07/04)
梅原 淳

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鉄道不思議読本

梅原淳【著】
朝日新聞出版(朝日文庫)刊
2008(平成20)年7月発行


たまにテレビでも見かける梅原淳氏は、まことに謹厳実直な人物としてわたくしの印象に残つてゐます。しかしいはゆる石部金吉タイプではなく、ユウモワも解する気さくな面も有るやうです。さらに、どうやらわたくしとは同世代で、いかなる車両を見て育つてきたかなどの共通点が見出せます。さうなると一升瓶でも下げてちよつと語り合ひたい気分もあるのですが、さすがに「お前と一緒にされてたまるか」と一蹴されさうなので、それは黙つておくことにしませう。

まあそんな梅原氏の著書でありますから、例へば某成美堂や某二見書房などの雑学文庫ものとは一線を画す内容に相違あるまいと、購買したのであります。
ところが、頁を捲つてみると、かう書いてあります。
「本書は、二〇〇一(平成十三)年九月に東京堂出版より発行された『鉄道・車両の謎と不思議』を改題・再編集したものです」
ははあ、その本は持つてゐるなあ、と軽微なる衝撃を受けましたが、まあデータなどは更新されてゐるやうですので、よしといたしませう。

第1章「電車と鉄道会社の不思議」では、電車の定義を教へてくれます。大手民鉄と中小・地方鉄道の違ひとは、意外なものであります。
第2章「線路とレールの不思議」は、文字通りレールや鉄橋、路線名のうんちくを披露します。
第3章は「駅構内・施設の不思議」。駅の時計や配線、ポイント、スイッチバックから回収済み切符の話、さらには自動改札機やオーバーランと盛りだくさん。
第4章「鉄道車両と車内環境の不思議」。パンタグラフ、ブレーキ、ATS、ATC・ATOシート幅に冷暖房等等等......
第5章は「時刻表の不思議」。ま、不思議といふほどではないのですがね。
第6章「鉄道車両の意外な仲間たち」では、一見鉄道車両には見えないが歴とした仲間なのだよ、といふものを紹介してゐます。名古屋のガイドウェイバスとか。

以上のやうに、テツのビギナーやジュニアにとつては「今さら聞けない」レベルの内容が多いので、一読の価値はあるのではないでせうか。本書により新たなテツが誕生すれば、それはまた良いことだとは思ひますが、同時に梅原氏の真面目な問ひかけにも自分なりの回答を見つけ、責任ある行動を望むものであります。付章として文庫版に加へられたJR福知山線の事故を考へる文章の事ですがね。著者は「鉄道とは何か。存在しなくて済むのならば、存在しないほうがよいものなのだろうか」などと自問自答したさうです。
そして、昨今の(わたくしには)過剰とも思へる鉄道ブームについても、わたくしが常々感じてゐることを簡潔に表現してくれてゐます。
本来、ブームになることは良いことであると著者も認めながら、手放しでは喜べないと述べてゐます。

そもそも、鉄道ブームとは鉄道の利用客が増え、それに伴って安全度も向上し、さらなる利用客増につながるという好循環を指すのではないだろうか。だが、現状では社会に必要とされなくなった路線や列車を追い求め、これらが姿を消してしまえば、次なる廃止候補が注目を浴びるという現象が繰り返される。また、鉄道博物館に代表される博物館の盛況ぶりは博物館法の規定を逸脱し、単なるテーマパークとして消費されているように思えてならない。もちろん、こうした事柄も鉄道の一側面であると筆者も認める。だが、本来理解すべき鉄道の姿からかけ離れてはいないだろうか」(文庫版あとがきより)

さういふ風潮にわたくしも疑問を感じ、最近では自分はテツではないと思ひはじめてゐます。著者はかろうじて「鉄道が存在しなくてもよい」といふ回答をからは踏みとどまることが出来たと語り、望みを繋いでゐます。
軽い気持ちで読み始めると、少し重たいかもしれませんが、前述の通り、テツ初心者の方は目を通していただきたいなあと。

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