源氏川苦心の快楽書肆
古い本を探しては読みふけつてゐます。よければお付き合ひくださいな。
祖父東條英機「一切語るなかれ」
祖父東條英機「一切語るなかれ」 (文春文庫)祖父東條英機「一切語るなかれ」 (文春文庫)
(2000/03/10)
東條 由布子

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祖父東條英機「一切語るなかれ」

東條由布子【著】
文藝春秋(文春文庫)刊
2000(平成12)年3月発行


今年は終戦70周年といふことで、かかる書物も再び注目を浴びてゐるやうです。
東條英機と言へば「A級戦犯」の代名詞のやうな人。しかし近年の「東京裁判」への風当りは強く、東條再評価も進んでゐると聞いてをります。わたくしも東京裁判の正当性につきましては疑義を差し挟みたい一人なのですが......
さういふ風潮を良いことに、お坊ちやん宰相が無邪気にも新たな「談話」を発表するとか。よせばいいのに。それでなくても、最近の日本礼賛傾向には「ちよつと違ふのではないか」と感じてゐるところです。

まづ本書には、東條英機その人の実像とはどんなんか?を知りたいといふ目的がありました。しかし考へてみれば、東條処刑の時にまだ9歳の著者に、その任は重すぎたと申せませう。無論著者本人の責任ではありません。
本書はあくまでも東條の孫娘たる著者の半世紀とでも呼ぶべき性格のもので、東條英機の肉親であるばかりに迫害を受け続けた苦難の経験が綴られてゐます。著者の父は勤務先から馘首され、再就職したくてもイザコザを恐れた企業ばかりで、無職の時期を過ごす羽目になります。
また著者の兄は、学校で担任を引き受ける先生がゐなくて、無視され孤独の日々を過ごしたとか。よくグレなかつたものであります。それもこれも、東條英機の教へ「沈黙。弁解せず。一切語るなかれ」を忠実に遺族が守つてゐたことの証左でありませう。もつともこの一冊で、かなり語つてしまひましたが。

身内からの視線ですので、まあ目の曇りも、身贔屓もあるでせう。それでも隠れてゐた現代史の一面を明らかにしたといふ意味で、一定の価値を持つ書物と申せませう。
ところで著者の生誕時の名前は「東條淑枝」らしいのですが、「岩浪由布子」「東條由布子」なる名前も混在してゐます。単なるペンネームなのでせうか。どうでもいいけど。

ちよつと今夜は呑み過ぎました。わたくしにしては珍しいことです。
布団が恋しいので、ここでご無礼いたします。

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