源氏川苦心の快楽書肆
古い本を探しては読みふけつてゐます。よければお付き合ひくださいな。
トップ屋戦士の記録
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トップ屋戦士の記録 無署名ノンフィクション 

梶山季之【著】
徳間書店(徳間文庫)刊
1991(平成3)年5月発行

梶山季之氏が取材先の香港で客死してから、早40年となりました。
梶山氏のことをポルノ作家だと思つてゐる怪しからぬ人が未だ多くて(まあ、あれだけ量産してゐれば仕方ないけれど)、わたくしが梶山氏の話をするとニヤニヤし、君も好きだねえなどと野卑な笑ひを浮かべるヤツらがゐるのです。ま、梶山氏もサアヴィスが過ぎるところもありましたがな。最近では『せどり男爵数奇譚』の作者として若い人に知られてゐるやうです。

そんな梶山氏も元々は第十五次「新思潮」の同人であり、純文学志向でありました。それが、昭和33年頃から始まる「週刊誌ブーム」に乗つて、トップ屋としての活動が主流となつていきます。
因みに昭和33年には「週刊大衆」「週刊明星」「週刊女性自身」など、翌34年には「朝日ジャーナル」「週刊文春」「週刊現代」「週刊平凡」「週刊時事」「週刊コウロン」などが創刊されるといふ、空前の創刊ラッシュを迎へてゐたのであります。
さうなりますと、紙面を支へるライターが不足します。「トップ屋」たちはその流れに乗つたと申せませう。

本書は、「週刊文春」に発表された無署名記事を中心に、トップ屋時代の梶山氏の活躍を伝へる一冊であります。全国に取材網を持つ新聞社系週刊誌に対し、新参者の出版社系週刊誌にはそれがありません。記事の内容で新聞社に負けるな!とばかりに彼らは自ら企画立案から取材・執筆まで、大車輪の活躍を見せたのでした。
梶山氏のその姿勢は常に反骨を貫き、権力を嫌ふ一方で、弱者には温かい眼差しを示します。タブーに斬り込むことが多かつたので、圧力・脅迫なども相当あつたさうです。

プライバシー問題が五月蝿くなつてきた時代を反映して、実名で書けない記事もあり、中にはフィクションとして書かざるを得ないことも。本書では「話題小説 皇太子の恋」がそれに相当します。他にも、権力者の腐敗を追及する記事などでは常に訴訟問題と隣り合せになり、実名を使へぬ事が。結局それが、梶山氏を再び小説の世界へ戻す要因のひとつになつたのではと思ひます。

本書はとうに絶版となつてゐますが、その社会的・歴史的価値は益益高まる一方であると申せませう。現在のジャアナリズムが失つたものを再確認できるといふ意味でも、復刊を望むものであります。

では、夜も更けて参りました。今夜はこれにてご無礼いたします。



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