源氏川苦心の快楽書肆
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でっちあげ
でっちあげ―福岡「殺人教師」事件の真相 (新潮文庫)/福田 ますみ

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でっちあげ-福岡「殺人教師」事件の真相
福田ますみ【著】
新潮社(新潮文庫)刊
2010(平成22)年1月発行


2003年に起きた「殺人教師」事件。警察官でも日常的に犯罪を犯す昨今、かういふ教師もゐるのだらうなと思つてゐました。むろん報道を通しての知識しかありません。
著者の福田ますみ氏も当初は同じ認識だつたやうですが、自ら取材を続けるうちに、これはをかしいぞ、と考へるやうになつたと述べてゐます。

被害児童の両親が、今でいふモンスター・ペアレンツであり、彼らの事実ではない発言を報道が一方的に鵜呑みにしたといふのです。
実際には無かつた(あるいは軽微な)体罰やいぢめを、家庭側の抗議により教師本人に認めさせやうとする校長の対応は、現在の学校と親の関係を如実に示してゐると申せませう。
まるで教師をサービス業の店員、校長を店長と同列に見てゐるやうです。つまり、親側には自分はお客様であるとの認識が有るのではないでせうか。

思へばわたくしが小中学生の頃、学校の教師は恐い存在でありました。暴力教師はごく普通に存在し、「職員室へ来い!」とどやされ、煙草のケムリいつぱいの教員室へ行き、グウで殴られる。オソガイものでした。
ま、そんな時代は過去のものになつて当然ですが、現在では逆に先生たちが親に怯える風潮のやうです。これもをかしい。

本書への批判として、教師側からの一方的な見方であるとの意見も聞きます。が、元来報道は偏向してゐるものです。客観的な報道は有り得ません。
従前親側からのみの報道一辺倒だつた事件を、新たに被告側からの視点で語ることは、ジャアナリストとしてまことに健全だと思ひます。むろん、事実の歪曲などはもつてのほかですが。

ただ、結果としてどつちつかずの判決が出たのは、藪の中となつてゐる部分が多いからでせう。例へば教師が最初に家庭訪問をした時の母親との会話は、立ち会つた人はゐない訳で、双方の証言が食ひ違うならば、その再現は残念ながら推測の域を出ません。
それでもなほ、ひとつの大きな意思が動く時、でつちあげは容易に起こり得ることを認識させた点で、本書の存在価値はあると考へるのでした。

では、今日はこれで。
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