源氏川苦心の快楽書肆
古い本を探しては読みふけつてゐます。よければお付き合ひくださいな。
愛の妖精(プチット・ファデット)
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愛の妖精 (プチット・ファデット) 

ジョルジュ・サンド【著】 
宮﨑嶺雄【訳】
岩波書店(岩波文庫)刊
1936(昭和11)年9月発行
1959(昭和34)年3月改版

邦訳では副題のやうになつてゐる「プチット・ファデット」といふのが原題であります。「小さなこほろぎ」の意味だとか。つまり愛も妖精も関係ありません。何故かういふ邦題になるのか、誰か説明できますか?

舞台はコッス村なる田園地帯。コッス村のバルボーさんの家に双子が生れました。兄のシルヴィネと弟のランドリーであります。
村の言ひ伝へでは、双子は一方が他方を成長させる為に、必ず早死にするといふ。で、それを避けるために何方かを奉公(里子)に出すのださうです。この二人の場合は、体も大きくしつかり者の弟・ランドリーが、体力に劣り甘えん坊気質の兄・シルヴィネを慮つて、自ら家を出ます。中中出来た弟。

一方、村にはファデ婆さんなる魔女(?)がゐて、孫娘のファデット(こほろぎ)とその弟(ばつた)を養育してゐました。この一家は得体の知れぬ魔法を駆使するといふので、村人たちから嫌はれ恐れられてゐたのです。ファデットも口を開けば憎まれ口ばかり叩き、身なりもみすぼらしく顔も黒く不器量な娘であるといふことで、皆から敬遠されてゐたわけです。バルボーさんちの兄弟も例外ではありません。なるべく接点を持たぬやうにしてゐた節があります。
ある時、シルヴィネが行方不明となり必死に探すランドリーに、ファデットは条件付きでシルヴィネの居場所を教へます。これ以降、ランドリーとファデットは徐々に接近し始めるのであります......

ストオリィとしては特段にヒネリが無く、予定調和といふ意見も聞こえてきさうですが、ファデットが「目覚め」てからの展開は、ちよつと感動ですよね。ランドリーと交際して以降の彼女は、幼さが消え身だしなみに気を使ふやうになり、実は器量よしではないかと思はれ始め、性格も棘がなくなり他人の痛みを理解する素敵な女性に成長し、それまでチヤホヤされてきたマドレーヌさんがまるでつまらない女性であつたことを露見させてしまつた。

ファデットがランドリーにその心根を告白するシーンや、(自分を敵視してゐた)シルヴィネが病に伏した時の治療の様子などは、ゾクリとさせられる程の筆力と申せませう。
誰もが経験したであらう、揺れ動く思春期のリリシズムを描いて余すところがありませぬ。今後も読み継がれて欲しい一冊なのであります。
ほら、そこの君も喰はず嫌ひをせずに、読みませう。




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