源氏川苦心の快楽書肆
古い本を探しては読みふけつてゐます。よければお付き合ひくださいな。
線路の果てに旅がある
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線路の果てに旅がある

宮脇俊三【著】
新潮社(新潮文庫)刊
1996(平成8)年12月発行

かつて小学館から発売になつた『全線全駅鉄道の旅』といふシリーズがありました。これは日本全国の鉄道路線を地域別に10分割し、それぞれに一冊を割り当て解説した全10巻の読物であります(私鉄は東日本・西日本に分け、別巻2冊として刊行)。
編集委員が宮脇俊三・原田勝正の両氏といふことで、宮脇氏も同シリーズに連載をしてゐました(連載時のタイトルは「巻頭エッセイ 魅力の鉄道」)。それを中心に編集されたのが本書であります。
それぞれの回に相当した地区の路線を対象にしてあるので、日本全国から万遍なく選ばれてゐます。

JR線・民鉄線・公営鉄道・第三セクター・新交通システムと実にヴァラエティ豊かな選択。恐らく全体のバランスを考へてのことでせう。
そして旅の形態も、基本は一人旅ながら、TVクルーとの同行取材・編集者同行・カメラマン同行など、普段とは違ふ旅の面も見せてゐます。まあ一言で言へば、実に多彩な旅を演出してゐると申せませう。さう、演出。本来宮脇氏が唾棄すべきものです。
既に紀行作家として大物になつてしまつた宮脇氏としては、誰からも束縛されぬ、かつての気ままな一人旅はもう過去のものになつてしまつた時代ですなあ。ちよつと寂しい。

さて巻末には、終着駅についての考察があります。宮脇氏には既に『終着駅は始発駅』『終着駅へ行ってきます』などの著作がありますが、やはり好きなんですねえ、ここでも語つちやいます。

どん詰まりの「終着駅」、つまり電車の終点としての終着ではなく、もうこれ以上は線路が無く、物理的に進むことは無理です、といふ駅を、その成立や実態とを照らし合せて、宮脇氏は十の分類に分けたのであります。
その名称も「婚約不履行型」「都会の孤独型」「道産子奮闘型」「涙の連絡船型」「北前船慕情型」「黒潮大量型」など、ユニイク。しかしどん詰まり終着駅と言へば、要するに盲腸線であります。経営状態は悪く、廃線の危機に瀕する路線が多いのです。実際、ここで紹介されてゐる終着駅も、現在では結構の数が姿を消してゐます。
せめて本書を鎮魂曲として、消えた駅の冥福を祈りませうか。

では、又。ご機嫌よう。


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