源氏川苦心の快楽書肆
古い本を探しては読みふけつてゐます。よければお付き合ひくださいな。
隠された証言
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隠された証言 日航123便墜落事故

藤田日出男【著】
新潮社(新潮文庫)刊
2006(平成18)年8月発行

去る12日は、あの日航機墜落事故から丁度30年目を迎へたといふことで、報道各社も特集を組んでゐました。
来年から施行される新国民の休日・「山の日」は、当初この8月12日が有力だつたのが、あの悲しい事故が起きた同日に設定するのはいかがなものか、といふ意見に配慮して最終的に8月11日になつたのださうです。最近は何でもかんでも、過剰に「配慮」する風潮ですが、この件については適切な処置だつたと存じます。

拙ブログでも、先達て『墜落遺体』といふ書物について述べましたが、これは元群馬県警の飯塚訓氏が、その遺体確認に特化して詳述した一冊でした。敢へて事故の詳細や事故原因については触れられてゐません。
一方、本書『隠された証言』は、当時日航機パイロットであり、日航の内部組織である「航空安全推進連絡会議」メムバアであつた藤田日出男氏が、その事故原因をとことん追求する一冊です。
事故を起こした当事者側である日航の人物が、果たして客観的な視点で書けるのか? との指摘もありましたが、本書を読み進めるうちに、さういふことは全く関係なく、事実を掘り起こさんとする著者の姿勢に惹かれてゆくのであります。

事故発生後、運輸省(当時)の事故調査委員会は、その調査結果を公開いたしました。その原因は、圧力隔壁の破損と推定し、その破損が起きた背景として、以前大阪空港で発生した「しりもち事故」の際に、修理を担当した米ボーイング社の作業に不具合があつたらしい。ボーイング社は当初否定してゐましたが、後に一転、認めてゐます。
で、圧力隔壁が破壊された際に、機内では相当な減圧(急減圧)が発生したと述べてゐるのですが、この「急減圧」について、著者の藤田日出男氏は疑問を呈してゐます。といふか、本書はこの「急減圧」は発生しなかつたことを証明するためだけに発表されたと申しても過言ではありますまい。

とにかく、事故調はなぜ「急減圧」に拘るのか、何かを隠蔽してゐるのでは......そもそも、事故現場の発見がなぜあれほど遅れたのか......実際には早期に分かつてゐて、故意に隠したのではないか.......生存者が4名ゐたが、それ以外の520名は全員即死であつたといふが、それは本当なのか......疑問が次々と湧いてくるのであります。
実際、生存者の証言では、墜落直後は、かなりの人が生きてゐたといふことです。中中救助が来ないので、耐へ切れず息を引き取つた人が多いと。

そして事故調は施行が迫つた情報公開法を理由に、多くの情報を廃棄処分にしてしまひます。存在してはまずい証拠を闇に葬り去らうとの意図がなかつたか?
疑問を抱へた著者の前に、一人の内部告発者が現れます。田中氏(仮名)といふ人物で、事故原因究明に当つてゐる藤田氏に情報を提供せんと、友人を通じて接触を図りました。田中氏情報は、藤田氏が疑惑に感じてゐたことを裏付けるもので、廃棄処分寸前の資料まで提供してくれたのであります。

各種の資料や証言、実験をもとに、藤田氏は「やはり急減圧はなかつた」と結論付け、事故調に再調査を求めるのですが......現在に至るまで、再調査は実現してゐません。
毎年8月12日がやつてくると、マスコミでも慰霊登山をする方々が報道されますが、セットで「事故原因の再調査」を要求する団体も紹介されたりします。かかる背景が分かると、なるほど再調査を求めたくなるのは当然だなと思はれるのであります。
しかし藤田氏もその後2008年に鬼籍に入り、現実には難しさうですなあ......



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