源氏川苦心の快楽書肆
古い本を探しては読みふけつてゐます。よければお付き合ひくださいな。
日本探見二泊三日
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日本探見二泊三日

宮脇俊三【著】
角川書店(角川文庫)刊
1994(平成6)年3月発行

月刊誌「旅」にて、「日本ふるさと探見」の題で連載されてゐたものをまとめた一冊であります。単行本刊行時に、『日本探見二泊三日』に改題されました。その理由は、宮脇氏によると「一泊や三泊もあるが、大半が二泊三日なので」ださうです。かういふアバウトさは嫌ひではありません。しかし、そもそも改題の必要はあつたのか、元の題でも良いぢやないかと勘考するところです。

本書の概念は、単行本の帯にある惹句によると、「ねらい目は、B級旅行地」ださうな。B級なになにといふ言ひまはしは余り好きではないけれど、まあ言はんとするところは分かります。
即ち、旅行ガイドには必ず載つてゐて、大ホテルが林立し観光バスが雁行する有名観光地を仮にA級とするならば、逆に秘境と呼ばれ、交通不便で訪問には若干の体力と忍耐を要する、知る人ぞ知る穴場をC級だと思ひなされ。「観光地にランク付けするな!」と叫ぶそこのお方、ごもつともな意見ですが、ここは目を瞑つてください。
その中間に当る、A級ほどの知名度は無いが、C級ほどの秘境ではなく、それなりの交通機関は通じてゐて、まだ自然も残されてゐる場所が本書の狙ふところであります。

そんな基準で登場するのは、熊野古道・親不知・豊後水道と日豊海岸・秋田・南淡路・阿武隈・五島列島・夕張・広島県三次・四国お遍路・岐阜県蛭川村などであります。
熊野古道なんかは、現在では超有名観光地ではないかと思ひますが、連載時の27年前の時点ではそれほどでも無かつたのでせうか。

宮脇氏は編集部の注文に対し、真正面から向き合ひ応へてゐます。必ずしも鉄道に乗れる旅ばかりではないのに、ご苦労なことであります。
熊野古道では雨に祟られ、秋田で「火振りかまくら」を体験し、日豊海岸に「昔の日本」を感じ、阿武隈の霊山では足がすくむやうな道に肝を冷やして、五島列島では隠れキリシタンにインタビューし、炭鉱からメロンへの変貌を遂げた夕張で感慨に耽る。
或は、三次の江川で鵜飼を愉しみつつ鵜を哀れみ、四国八十八か所のキセル体験をし、蛭川村でマツタケを採取しながら「マツタケに眼の色を変えるのが阿呆らしいような気がしてきた」と言ひ放つ。

かういふところでこそ、日本の良さはより深く味はへる。無論宮脇氏と同じやうな旅をする必要はありませんが、先入感に捕はれずに自らの五感で体験すれば、例へ有名観光地でなくても、記憶に残る旅のポイントは有ると申せませう。
まあ、どこへ旅行へ行つても日常の延長の遊びを期待し、著名な行楽地が無い土地では若干の優越感と僅少の侮蔑を含んで、「なんだ、何もないところだね」と呟く人々には無縁の一冊かなとも思ひます。

と、いささか挑発的な言辞を持つて、本項を締めくくることにしませう。
ぢやあまた、今日の日は左様なら。


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