源氏川苦心の快楽書肆
古い本を探しては読みふけつてゐます。よければお付き合ひくださいな。
英語演説
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増補 英語演説 その原則と練習

松本亨【著】
英友社刊
1966(昭和41)年3月発行
1974(昭和49)年4月増補

日本人は演説下手で、そのために様々な国際舞台で軽んぜられてきたと、松本亨氏は常々苦虫を噛み潰したやうな顔で(といふのは想像ですが)指摘してきました。
原稿をたどたどしく読むか、開き直つて日本語で演説し通訳に任せるといふのが、国際会議などで見せる「日本代表」の姿でありました。無論これは松本氏が現役の頃の話。現在は堂々とイギリス語、もとい英語で表現力豊かに演説する人が多くなりました。
では本書はもう無用の長物かといふと、さうでもありますまい。いつの時代でも、聴衆の前で説得力のある表現を会得するのは重要なことであります。わたくしは結局身に付きませんでしたがね。

以下に、ちよつと内容をかいつまんで紹介しませう。
「Ⅰ 人の前で話す」では、恐怖心の克服や自己意識を捨てる方法を、自らの体験を基に述べてゐます。また、「演説の三要素」として、「事実を明らかにすること」「聴く者を説得すること」「聴く者をして行動をおこさせるように訴えること」を挙げてゐます。

続く「Ⅱ 聞く人を知れ」では、聴衆が共通認識としてもつてゐる事柄をなるべく多く仕入れ、それを演説に取り入れて聴衆との距離感を詰めませうといふことですな。「1人だけに集中するな、1人でも無視するな」

更に「Ⅲ タイトルのえらび方、つけ方」では、中高生・大学生・社会人の英語弁論大会におけるタイトルを紹介して、読者の参考に供してゐます。

そして「Ⅳ スピーチの内容」では、前章で紹介した弁論大会で入賞した演説をそのまま採録してゐます。松本氏も評する如く、低学年ほど先生の介入度が高いやうで、いささか気取つた物言ひが目立つのが残念。

一転して「Ⅴ スピーチの構造」では、構成を考へる時に参考になる、技術的な面を解説してゐます。

一方で「Ⅵ 発声法」では、具体的に声の出し方、使ひ方を説明します。「ふだんの心がけ」として、酒は控へよ、タバコも駄目よ、辛いものは避けなさい、水をガブガブと飲み過ぎるな(ジウスやコオラ類などの甘いものは発声に障害あり、飲むなら熱い珈琲かお茶ださうな)、夜更かしはするなと、中中厳しい。これでは人生はツマラナイと思ふなら、演説の上達は諦めよと言はんばかりであります。

本書の白眉「Ⅶ 有名な演説」では、練習用に適した過去の著名な演説が収録されてゐます。強調すべきアクセントの位置が分かるやうに記号が付いてゐるのですが、CDを付録に付ければ尚良いですな。ちなみに収録された演説は「山上の垂訓」「マーカス・アントーニアス」「ウィンストン・チャーチル」「J・F・ケネディ」「ジョンソン大統領」、そしてキング牧師「私には夢がある」。
特に最後のものは、本書初版後の演説で、松本氏はこれを是非収録したいが為に、増補版を出したやうです。確かに、実に感動的な演説であります。

「Ⅷ スピーチこばれ話」では、松本氏自身の体験談、失敗談が紹介されてゐて、肩の力を抜いて読めるセクションと申せませう。
最後は、「Ⅸ 発音上達のためのPronunciation」。日本人が不得手な発音を含むフレイズを、別の言ひ方で表現するリスト。或は代替表現が無い場合、頑張つて覚える一覧表。痒い所に手が届く表といふわけです。

実戦にも使へ、読物としても読める、古典的名著と存じます。



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